研究成果の概要 |
微生物が有する物質生産能の最大活用を目的に, 様々な培養条件検討を基盤として休眠状態にある二次代謝産物生合成遺伝子の解除を目指した. 海洋糸状菌Trichoderma sp. TPU199株は, ハロゲン化物塩の添加培養により含ハロゲン代謝産物を生産することが既に分かっており, 今回, NaI添加培養液を更に精査することで, 含I代謝産物を中間体として得られた新規化合物を2成分見出した. これは, 本手法が含ハロゲン物質の生産のみならず, 構造多様性を広げる培養法へと繋がる可能性を提示した. また, 本研究により見出したTPU199株も含む10株の微生物より17個の新規化合物の取得に成功した.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
糸状菌や放線菌に代表される微生物資源は数多くの医薬シード (抗生物質の種) を提供したきたが, このような探索研究が積み重ねられるにつれて有用な抗生物質を見出すことが年々難しくなってきた. 本研究では, これまでに利用されていない眠った状態にある二次代謝産物生合成遺伝子に着目し, 微生物遺伝子資源の新しい活用方法の提供に取り組んできた. 休眠状態を解除する新しい手法が多くの微生物資源に応用できれば, 既存資源の再開拓と新たな有用物質の発見, そして有効な抗生物質への開発が期待される.
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