研究概要 |
本研究の目的は,税法や会計基準を用いた産業政策に焦点を当て,会計のマクロレベルの機能について分析することにある。その研究の結果,以下の成果を得た。 (1)文献収集 新聞・雑誌・政府刊行物などにより,わが国の産業政策の中から税法や会計基準を用いたものを抽出し,政策目的と会計手段の有効性について分析した。 (2)分析枠組みの確立 マクロ会計政策の研究者,会計基準設定者を招聘し,産業政策の有効性の検証方法など,分析の枠組みについて活発な議論を展開し,研究メンバー間で認識の共有化を行った。 (3)会計ビッグバンの影響分析 90年代以降,日本の産業社会は会計基準のグローバル化に多くのエネルギーを割いてきた。すなわち1997年〜2005年にかけて大規模な会計制度改革を経験し、現在もEUの「同等性評価」による国1際会計基準の採用の圧力を受けている。そこで企業会計基準委員会、経団連、金融庁、経産省、日本公認会計士協会等が、個々に、あるいは連携して国際会計基準審議会に対応する様を分析した。 (4)国際会計基準(アングロサクソン型会計基準)の計算構造の解明 国際会計基準との調整を終えた領域以外に,目下議論の対象にされている領域,近い将来,議題に上ると予想される領域を取り上げ,そこで導入されると予想されるアングロサクソン型の個別会計基準の特質を分析した。それによってわが国の会計基準との調整の方向を提起できたのではないかと考えている。 (5)会計基準転換の影響分析 国際会計基準の採用が企業経営やマクロ経済にどのような影響を与えるのか,学会,経済界の専門家のも含めて,活発な討論を展開した。 (6)海外の国家戦略の分析 国際会計基準に対する海外の国家戦略を分析するため,精華大学教授(国会議員)や中国の有力会計士,英国マンチェスター大学の会計学者にインタビューを行った。それによって多くの貴重な知見を得た。
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