研究概要 |
本研究は,健康な中高年齢者を対象として体操教室を実施し,身体形態計測,体力測定,心理学的検査,神経生理学的検査および行動量調査を,17ヶ月間約4ヶ月毎に行い,健康に関して季節変動も含めて総合的評価を行うことを目的とした。対象者は23名で,平均年齢は64.1±6.0(SD)歳であった。身体形態計測としては,身長,体重,体脂肪,血圧,胸囲,胴囲,腰囲,左右大腿囲,左右下腿囲で,体力測定は文部科学省による高齢者向け体力テストを参考に実施した。心理学的検査には,精神健康度検査として日本版GHQ30および生活の質検査としてWHOのQOL26を用いた。神経生理学的検査には,心電図RR間隔変動のスペクトル解析を行い,低周波と高周波成分についてパワースペクトル積分値(PSD)を求めた。行動量調査は,万歩計により歩数記録を行わせ,睡眠時間も記録させた。その結果,身体形態計測で左右の大腿囲において有意な増加が認められた。体力測定では握力および長座体前屈で有意な改善が,上体おこしおよび開眼片足立ちで改善の傾向が認められた。心理学的検査およびRR間隔変動のPSDでは有意な変化は認められなかったが,GHQ30の睡眠障害の要因において,中等度以上の症状ありを示す者の割合が常に30%前後を示し,他の要因に比較して有意に割合が高かった。行動量および睡眠時間については季節変動が認められた。以上の結果は,運動継続による集団の変化として,心理的項目に比較して,身体的項目の方がとらえやすいことを示すと考えられた。また,健常対象者においても3割程度の者が中等度以上の睡眠障害症状を有していることが明らかとなった。症状ありの者は,身体的症状,不安およびうつ傾向の訴えも多く,QOL値も低い傾向にあることが明らかとなった。日常活動量には季節変動が認められ,それらと精神健康度との関連についての研究の必要性が考えられた。
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