研究概要 |
本年度は,有意味語/無意味語音声というタスクの違いにおいて生じる反応の違いについて検討した。また,音声のセグメンテーションにとって重要な位置情報に着目し,マスキング課題を用いた実験を行った。それぞれの音声は,2つのアクセントフレーズ(以下,AP)からなり,マスキングには,擬似的な白色雑音を用いた。実験音声は,(1)マスキングされていない有意味語音声48音声,無意味語音声48音声,(2)前APの前半2モーラがマスクされた有意味語音声48音声,無意味語音声48音声,(3)前APの後半2モーラがマスクされた有意味語音声48音声,無意味語音声48音声,(4)後APの前半2モーラがマスクされた有意味語音声48音声,無意味語音声48音声,(5)後APの後半2モーラがマスクされた有意味語音声48音声,無意味語音声48音声,を用いた。 本実験の結果,セグメンテーション位置が有意味語音声と同じアクセント規則に従った割合は,(1)84.9%,(2)79.3%,(3)81.1%,(4)70.5%,(5)64.5%だった。これらの結果を,有意味語音声,無意味語音声に分類すると,セグメンテーション位置が有意味語音声と同じアクセント規則に従った割合は,有意味語音声は85.2%,無意味語音声は66.9%だった。条件ごとの割合は,有意味語音声が(1)92.0%,(2)90.1%,(3)91.1%,(4)78.6%,(5)74.1%,無意味語音声が(1)77.8%,(2)68.6%,(3)71.0%,(4)62.3%,(5)54.9%だった。これらの結果は,セグメンテーションに重要な情報は,後APにある可能性を示唆している。特に,わずかではあるが,条件(4)ではなく,条件(5)の位置がマスクされたほうが正しいセグメンテーションをしにくいという結果は,実験参加者の内省と矛盾しており,興味深い結果であった。
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