研究概要 |
本研究の目的は、シングルサイトコヒーレントポテンシャル近似(シングルサイトCPA)を超えてスピントロにクス材料の磁気特性や電子輸送特性を第一原理から計算することである、本年度は昨年度に引き続き、スピントロニクス材料設計でやはり非常に重要な希薄磁性半導体中の磁性不純物間の磁気的相互作用について、局所環境効果を取り入れた計算を行った。シングルサイトCPAで計算した有効媒質中に数十原子を含むクラスターを考えその中に磁性不純物をランダムに配置し局所的環境効果を取り入れる(クラスター法)。この方法により磁気的相互作用の計算については、シングルサイトCPAに基づく方法(Liechtensteinら)を超えた取り扱いが可能となった。特に今年度はプログラムの高速化を行い、いろいろな系に本手法を応用できるようにした。 (Ga, Mn)N,(Ga, Mn)As,(Ga, Cr)N等について交換相互作用を計算し、得られた不純物配置に依存する交換相互作用を用いて乱雑位相近似(RPA ; G.Bouzerar et al.,EuroPhys.Lett.69(2005)812)によりキュリー温度を計算した。第一近接間の相互作用は不純物配置に大きく依存するが、この相互作用は低濃度領域では磁気的パーコレーション効果のためキュリー温度には大きな影響を与えない。そのため、得られたキュリー温度はLiechtensteinの方法で求めた交換相互作用を使った場合とあまり変わらない。 また、不純物配置と交換相互作用の関係について整理するために、局所環境効果を取り入れた場合の電子状態密度を計算するサブルーチンを作成した。さらに、希薄磁性半導体の磁気励起特性についての情報を得るために、Bouzerarらの方法を応用してスピン波の分散関係と状態密度を計算するサブリーチンセットを開発し、磁気励起特性に不規則性が与える影響を調べた。
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