研究課題
若手研究(B)
申請者の教室ではヘムを酸素運搬分子としてだけでなく、赤血球特異的遺伝子の発現を調節する分子として捉え研究を進めてきた。その研究アプローチとして、ヘムに制御される新規赤血球特異的遺伝子群を同定するためにヘム欠損赤芽球と野生型赤芽球における遣伝子発現プロフィールのスクリーニングを行い、造血組織特異的、赤血球系列特異的発現が認められる遺伝子を探索した結果、複数のヘム制御下にある未知の赤血球特異的遺伝子を同定し得た。そのうち本研究では、DNA-microtube関連遺伝子であるNusap(nucleolar spindle-associated protein)、について焦点を絞り、赤血球造血におけるその役割を解析した。NuSAP遺伝子をマウス赤白血病細胞株(MEL)に一過性に強制発現させ細胞周期を検討した結果、対照と比べG2/M期の割合が著明に増加した。さらに瀉血により赤芽球造血を促進させた貧血マウスと対照マウス由来のTER119陽性赤芽球におけるNuSAP遺伝子の発現を比較した結果、前者において有意な高発現を認めた。また、マウス由来のTER119陽性赤芽球をさらにCD71^<high>(好塩基性赤芽球分画)とCD71^<low>(正染性赤芽球分画)に分離しそれぞれの分画におけるNuSAP遺伝子の発現を検討した結果、より増殖活性の高いと報告されている前者において有意な高発現を認めた。本遺伝子のヘムを介した発現制御機構を明らかにするため、MEL細胞を用いてプロモーター解析を行った結果、NF-Yにより発現が制御されていることが明らかとなった。以上の結果から、ヘムはNuSAPを介し、赤血球造血を制御している可能性が示唆された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
British Journal of Haematology. 135
ページ: 583-590