赤血球造血に関わる分化制御機構の詳細は未だ明らかとされていない。我々はヘムがこの制御機構の中心を担っていると考え、これまでに野生型赤芽球とヘム欠損赤芽球の遺伝子発現プロファイルを比較検討することにより、ヘム制御下にある新規赤血球特異的4遺伝子UCP2 (uncoupling protein 2)、NuSAP (nucleolar spindle associated protein)、CNBP (cellular nucleic acid binding protein)、未知の1遺伝子を同定した。この4遺伝子のうち細胞分裂に関連があると考えられたNuSAP (nucleolar spindle associated protein)について、その機能を解析した。NuSAP遺伝子をマウス赤白血病細胞株(MEL)に一過性に強制発現させ細胞周期を検討した結果、対照と比べG2/M期の割合が著明に増加し、赤芽球系前駆細胞の増殖促進に寄与する可能性が示唆された。さらに本遺伝子のヘムを介した発現制御機構を明らかにするため、MEL細胞を用いてプロモーター解析を行った結果、-30/-34におけるCCAATがプロモーター活性において重要であり、同領域へのNF-Yの結合活性がDMSOによる赤芽球系分化誘導により増強される可能性が示唆された。以上の結果から、ヘムはNuSAPは赤血球造血において細胞増殖に関与しており、その発現制御はNF-Yを介していると考えられる。
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