研究課題/領域番号 |
17H02858
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数学基礎・応用数学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 佳正 京都大学, 情報学研究科, 教授 (50172458)
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研究分担者 |
木村 欣司 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10447899)
高田 雅美 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (20397574)
關戸 啓人 京都大学, 国際高等教育院, 特定講師 (40718235)
前田 一貴 福知山公立大学, 新学部設置準備室, 講師 (80732982)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2019年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2019年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2018年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2017年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 特異値分解 / 並列計算 / 原点シフト / 可積分アルゴリズム / 片側ヤコビ法 / 両側ヤコビ法 / 直交QD法 / 櫻井・杉浦法 / 並列計算の実装 / 相対精度 / 部分特異値分解 / 大規模スパース行列 / ランチョスアルゴリズム / QR分解 / 応用可積分系 / 固有値計算 |
研究実績の概要 |
櫻井・杉浦法は左特異ベクトルのみを用いて計算を行うため直交QD法と相性が良いが,その一方で, 今倉らにより改良された櫻井・杉浦法に,LAPACKの片側ヤコビ法ではなく,我々の実装した片側ヤコビ法と両側ヤコビ法を搭載した場合の性能評価をGPGPUを利用して行うという研究計画に沿って研究を行った. ハウスフォルダー2重対角化で前処理しQR法で特異ベクトルを計算するのが従来法である.複数の理由により,NVIDIA Jetson NanoではなくRaspberry pi 4を25台(実験24台+開発1台)購入した.また,ハウスフォルダー2重対角化で前処理し,AIRLB法の下位ルーチンとして,可積分アルゴリズムの一種である直交QD法で特異ベクトルを計算したところ,QR法よりも優れた解法であることを確認できた.AIRLB法では高精度な2重対角化ができるため,直交QD法を生かせた実装が可能である. 一方,2重対角化を経由しない片側ヤコビ法をSST法の下位ルーチンに使ったところ,最大特異値*EPS(計算機イプシロン、10^{-16})より小さい特異値の値であっても信頼できる値を計算できることが多いことがわかった.このため,櫻井・杉浦法には本研究で開発した片側ヤコビ法が最も適していることとなる.一方,両側ヤコビ法は高速性の観点で片側ヤコビ法よりも優れているため,高速性を必要とする特異スペクトル変換法に向いた計算法であることが判明した. 以上の研究で開発した実装コードはライブラリhttp://www-is.amp.i.kyoto-u.ac.jp/LAPROGNC/にて公開している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小規模行列の特異値分解を得意とするヤコビ法がある.ヤコビ法には,片側ヤコビ法と両側ヤコビ法があるが,両側ヤコビ法の適切な実装はまだない.本研究では,この問題を解決するために,両側ヤコビ法の3種類の実装方法を開発し提案している.この提案方法を用いる ことで,既存のLAPACKの片側ヤコビ法と比べ,より高精度に特異値分解できることを確認している.開発の過程で,当初の予定と違うアルゴリズムを使う必要が生じ,その分,数値実験が遅れたが,既存のQR法による特異ベクトル計算に対して結果的にはより良好な精度を実現することができた.
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今後の研究の推進方策 |
工学では,最大特異値*EPS(計算機イプシロン、10^{-16})以上の特異値のみが重要で,これはAIRLB法で高精度に計算できる.しかし,これよりも小さい特異値は, ハウスホルダー変換と同じく,AIRLB法でも高精度計算は困難である.一方,片側ヤコビ法は条件数の大きな行列には強いものの,特に単精度では近接特異値や密集特異値の場合の特異値分解の精度が良くない.そこで,直交QD法の出番となる.このように可積分アルゴリズムである直交QD法のより徹底した研究が待たれる.
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