平成30年度においては、メタ存在論における一立場としてのTruthmaker理論(以下、「TM理論」)のあり方を確立するため、その具体的な理論的役割、理論的動機を部分的に明らかにすることを目的とした。このために、「存在論の方法としてのTM理論とはどのようなものか」、「TM理論はどのような種類の真理に適用されるべきか」という問いを軸に、研究を進めた。結果として、以下の成果を得た。 1つ目の問いについては、存在論への言語分析的アプローチとの比較から、存在論の方法としてのTM理論がどのようなものであるかを明らかにすることを試みた。先に、言語分析的存在論による説明が、それが依拠するパラフレーズ関係の対称性のために、存在論的に基礎的な対象を明らかにすることができないという問題を指摘した。一方で、TM理論が、言語分析に依存したものではないこと、真理と実在の間の非対称的な説明関係に依拠するTM理論が、上記の対称性の問題をかかえないということを明らかにした。さらに、TM理論が依拠する真理と実在の間の説明関係の内実が、部分的に、必然的真理の外延的な区別を可能にするhyperintensionalityの観点から与えられることが明らかになった。 2つ目の問いについては、TM理論の適用可能性が問題になりうる種類の真理として、様相的真理を挙げ、存在論の方法としてのTM理論がこの種の真理に適用可能でなければならないということを示した。この過程で、TM理論を構成する3つの主張(TM理論の適用範囲、TM関係の定義、TMとはどのような種類の存在者か)が優先順位をもつこと、そして、この優先順位に基づいて、特定の真理に対するTM理論の適用可能性を判定することができることを明らかにした。すなわち、様相的真理以外の真理についても、同様の判定基準をもって、その適用可能性が一般的な仕方ではかれることが明らかになった。
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