研究実績の概要 |
ショウジョウバエ翅成虫原基をモデルとして, [研究課題A]カスパーゼが細胞死非依存的に器官成長を促す機構の解明と[研究課題B]翅成虫原基の最大サイズを規定する分子機構の解明の2つの研究課題に取り組み, 器官サイズ制御機構の一端を明らかにすることを目指した. 研究課題Aでは, 前年度までにカスパーゼの新規基質として発見した紡錘体形成チェックポイント機構構成因子の1つであるDrosophila BubR1に着目し, その切断の生理的意義を検討した. 非切断型変異体を作出したところ, 当該変異体は正常に発生した. 作出した変異体において, 細胞分裂に対する影響を翅成虫原基ライブイメージング法により検討した. その結果, tubulin重合阻害剤のコルヒチンで処理すると, 野生型に比べて細胞分裂期間の延長を示した. したがって, カスパーゼによるBubR1の切断は, 細胞分裂期間の決定に関与することが示唆された. 研究課題Bでは, 蛹へと変態しない状況では, 翅成虫原基が任意のサイズで自発的に成長を停止するということを利用し, 翅成虫原基の最大サイズを規定する分子機構の解明を目指した. ハイスループットに実験を行うために, 遺伝学を用いて蛹へと変態しない実験条件を構築した. 本実験条件において翅成虫原基が任意のサイズで自発的に成長を停止することを確認した. 発生の各ステージにおける翅成虫原基のマイクロアレイ解析を行った. その結果, 成長停止期では成長期に比べて, タンパク質翻訳制御因子の減少が観察され, さらにはタンパク質分解経路に関して, ユビキチン-プロテアソーム経路の低下とオートファジー-リソソーム経路の亢進がmRNAレベルで観察された. 今後は, タンパク異化・同化作用に焦点を当てて解析することで, 翅成虫原基の最大サイズを規定する分子機構が解明されることが期待される.
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