研究課題
基盤研究(C)
本研究では、虐待判定に用いるためのfNIRS(機能的近赤外分光法), 唾液中コルチゾル濃度測定と心理評価などの客観的指標を用いた複合評価モデルの構築を目的とし、行動的類似性が指摘されるADHDとマルトリートメント児の判別も目的とした。74名の被験者が本研究に参加した。抑制課題を用いて脳機能を計測し、fNIRS実施前後,起床時/就寝前の唾液を採取し測定した。結果、マルトリートメント児は、ADHD、定型発達児と比較して右下前頭回と眼窩前頭皮質の境界、主に情動認識・意思決定を司る領域の脳の血流が活発化した。常に何かに備えアクティブになっているマルトリートメント児の行動特性とも合致した結果となった。
被虐待経験を含むマルトリートメント児とADHD児の行動上の類似性は指摘されていたが、その違いがどこに存在するかに関する客観的指標を用いた研究報告は数少ない。本研究では、抑制課題遂行時のfNIRSによる脳機能計測を用いてマルトリートメント児の特徴的な情報処理に関する脳領域を検出した。マルトリートメント児たちが、環境依存的に情報処理スキルを高めてきた可能性が示唆される。本研究の結果が、マルトリートメント児に直接関わる支援者(医療従事者や児童相談所のスタッフ)らに理解され、支援に生かされる社会的意義は非常に大きい。今後も引き続きマルトリートメントによる影響の可視化研究を継続していく。
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