研究課題/領域番号 |
17K05414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
寺嶋 靖治 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教 (20435621)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2017年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 素粒子論 / 超弦理論 |
研究実績の概要 |
量子重力の理解は、我々の世界に対する認識、特に空間や時間の概念を根本的に異なったものに変える、非常に興味深い問題である。特に、ゲージ/重力対応と呼ばれる、量子重力と重力を含まない場の理論が互いに等価であるとする予想が重要となる。この対応は、反ドジッター空間(AdS空間)上の重力理論と共形場理論(CFT)の等価性が最もよく理解されており、AdS/CFT対応と呼ばれる。特に、この対応で重力理論の量子場をCFTの場具体的に与えることはバルク再構成と呼ばれる。 私と杉下氏は、AdS-Rindlerでのバルク再構成を詳しく調べた。特に共形場理論のユニタリー性等の基本的な性質を考察することで、 一般に部分領域の双対性とエンタングルメントウェッジ再構成が成立しないことを示した。これは、ホログラフィック誤り訂正の議論も否定する。これらのホログラフィック理論において現在まで強く正しさが信じられている性質が、無限小の周りの展開でなく正しく有限のニュートン定数で考えると量子重力効果で破れれていることは、量子重力の理解においても本質的に重要である。 また、私と鈴木氏は、ホログラフィックなBoundary 共形場理論(BCFT)に対して、摂動的なモード展開を明示的に与えた。これにより、バルク再構成等が具体的に議論できるようになった。さらに、もし(ホログラフィックとは限らない)BCFTが境界をもった重力と結合できるならば、そのエネルギー運動量テンソルは非自明な制約を満たすことを示した。ホログラフィックBCFTの場合には、これが具体的に満たされていることを示した。これらの結果は、AdS/CFT対応を理解し量子重力の性質を調べるうえで、非常に重要である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子論的に拡張された「幾何学」の研究で重要な事は、通常の幾何学との具体的な対応と、そこからの量子論的なずれの理解である。つまり、古典重力極限の解析が必要になる。ゲージ/重力対応を用いると、これには、一般にlarge N 極限と呼ばれる、自由度の大きいゲージ理論の解析が対応する。実際、この極限を取ることで古典時空やリーマン幾何が創発的に出現するはずである。この点に関して、AdS/CFT対応をlarge N極限で演算子形式で調べることにより、実際に、ゲージ理論の状態から量子重力の状態がどのように再構成されるかを理解することは非常に重要である。バルク再構成を詳しく調べることで、有限のニュートン定数であることによる非摂動的な量子重力効果が量子重力理論において、本質的に重要であることを発見したことは非常に重要な成果である。これらの結果から、この研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度得られた結果をさらに進めていくことを考えている。具体的には、演算子形式を用いたCFTの解析を進める。この解析は、様々な古典解の周りの準古典近似を扱っているので、まだ量子重力の幾何学の理解までは到達できていない。これを、非摂動的な量子重力の効果も取り入れたものに拡張する予定である。これは、本研究計画には必要不可欠である。また、ブラックホール解については、量子重力の本質的な性質が重要になると考えられるので、その場合についての非摂動的な理解についても重点的に研究を進めるつもりである。
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