研究課題
基盤研究(C)
タイのカオヤイ国立公園に生息する4種のサイチョウ類を対象として、大型種の種子散布者としての生態系機能を人為的攪乱の影響を受けにくい小型種キタカササギサイチョウの代替可能性について検討した。群集レベルの調査(のべ果実種数と主要樹種での食性重複度)では、小型種が大型種の種子散布者としての生態系機能を代替することが可能であると考えられた。一方、樹種レベル(大型種子をもつAglaia spectabilisとCanarium euphyllumにおける有効性)では、小型種のみでは、種子の持ち去り量や種子散布距離が大幅に減少し、有効な種子散布者としての機能を代替できない可能性が高いと考えられた。
キタカササギサイチョウは、アジア熱帯に生息するサイチョウ類の中で唯一、原生林に依存しなくても生息可能である。飼育下での保護増殖も進んでおり、タイでは空洞化した森へ再導入するサイチョウ類の第一候補として、GPSロガーによる個体追跡も開始されている。しかし、本種はIUCNレッドリストでLC(軽度懸念)とされており、より高いランクに該当する種が多く含まれるサイチョウ類の中では、広い分布域をもつ普通種であるが故にあまり注目されず、その生態系機能は過小評価されてきた。本研究の結果より、小型種であっても大型種の生態系機能を代替できるが、大型種子をつける樹種では、代替可能性が低下することが示された。
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Integrative Conservation
巻: 1 号: 1 ページ: 25-39
10.1002/inc3.9