研究課題
基盤研究(C)
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、多様な疾患を引き起こす医学上重要なウイルスの一つである。その対策には、生体内におけるHSVの病態をより深く理解する必要があると考えられる。HSVは、ウイルス粒子が細胞外に放出されず直接隣の細胞に感染する方法(細胞間伝播)が存在し、生体内では主な感染経路と考えられているが、その分子機構は不明であった。本研究はHSV細胞間伝播が、宿主因子PHB1およびPHB1が活性化に貢献するMEK/ERKシグナルに依存していることを明らかにした。
ヒトを宿主とするヘルペスウイルスは9種存在するが、その中には抗ウイルス剤がほぼ効果がないものも存在する。本研究が同定したPHB1およびMEK/ERKシグナルは、HSVだけでなく、ヘルペスウイルス科に属する三つの亜科すべてに共通して細胞間伝播を促進していた。すなわち本研究により、MEK/ERKシグナルに対する阻害剤は、すべてのヘルペスウイルス感染症に効果のある新規抗ヘルペスウイルス剤のターゲットとなりうる可能性が、提示できたと考えられる。
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