研究課題/領域番号 |
17K11547
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
形成外科学
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 智也 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (10445132)
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研究期間 (年度) |
2022-01-04 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2018年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2017年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 手術部位感染 / 細菌 / 皮膚軟部組織感染症 / 術後感染 / DEPIM法 / 皮膚潰瘍 / 創部感染 / 細胞増殖 / 創傷治癒 / 感染 / 形成外科学 |
研究開始時の研究の概要 |
熱傷や褥瘡などの開放創を皮弁、植皮で閉鎖する際、最も問題となる合併症が術後感染である。過去の報告では創部の細菌量が大量にある場合、術後感染のリスクが高くなるとされている。しかし現状では創部の細菌量を定量する方法は実用化されていない。そこでわれわれは、より簡便に細菌を定量する方法として誘電泳動インピーダンス法(DEPIM)法に着目した。本研究は①創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響を組織学的に検証すること。②DEPIM法の原理を応用し、創傷の細菌量を迅速診断できる機器を開発することの2点を目的としている。将来的なゴールは測定機器を患者さんに使用し、術後感染の頻度を減らすことである。
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研究実績の概要 |
熱傷や褥瘡などの開放創を閉鎖する場合の感染率は高い。感染率を下げ、より確実性のある手術をすることは形成外科医にとって関心の的である。近年、創傷が大量の細菌で汚染されていても臨床徴候に乏しく、見落としやすいことが明らかになっている。このような汚染された状態を事前に発見することで術後感染率を下げられると考えた。 本研究の目的は(1)創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響を組織学的に検証すること。(2)創傷の細菌量を迅速診断できる機器を開発することの2点である。令和4年度までに(1)創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響についての解析を行った。まず褥瘡の病理組織を検討することにより、組織内の細菌量と細胞増殖の間に負の相関関係があることを示した。この研究結果は英文誌に投稿し受理された。 次のステップとして(2)創傷の細菌量を迅速診断できる機器を開発することを目標とした。研究を計画した当初は、水溶液内の細菌量をインピーダンスの変化を測定することにより定量するDEPIM法を用いることを予定していた。しかしDEPIM法を用いる機器を開発、販売していた会社が解散し、本研究に継続して用いることが困難となった。したがって代替の方法を検討する必要が生じた。代わりの方法として、水液中の有機成分を分離し、質量によって分析する液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いることとした。パイロットスタディとして少数の検体を用いて解析を行ったところ、再現性のあるデータが得られた。しかし1検体当たりの解析にかかるコストが高価になってしまうため、将来的に実用化するにあたり現実的ではないことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の一つである創傷の細菌が肉芽組織に及ぼす影響を組織学的に検証することは予定通りに研究が進み、論文化まで完了した。しかし次のステップである細菌量の迅速定量機器の開発については、計画より遅れている。その理由は、研究計画の段階で使用を予定していたDEPIM法が機器の製造中止により入手困難となったためである。現在DEPIM法に代わる、低コストかつ簡便に細菌量を測定できる手法を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
細菌量の迅速定量機器の開発に当たり、DEPIM法の代わりの手法を検討している。次年度は次の2つの方法について妥当性を検討する予定である。 (1)生体蛍光イメージングによる創傷表面の細菌量の同定:創傷表面に存在する黄色ブドウ球菌や緑膿菌を405nmの紫外線を用いて検出する方法(MY Rennie,et al.Journal of Wound Care 26 (8), 452-460)。 (2)ウンドブロッティング法による細菌の同定:細菌が生成するタンパク質をニトロセルロース膜を用いて創傷表面から採取し、ルテニウムレッドで染色し定量する方法(Nakagami G. et al.Int Wound J.2020;17:191-211;196)。 それぞれの方法により得られたデータと細菌の定量培養によって求めた細菌量の間に相関関係があるかを確認する。最終的にはデータから細菌量を推測する回帰式を求めることを目標にする。
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