研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)
本研究は、互酬性を背景とした連鎖的な強制の契機を強調する人類学・社会学の贈与論を、贈与を一回的で自由な契約と構成する法学に対する異議申し立てと捉え返した。その上で、フランス法を素材として、贈与がもたらす権威的関係を掣肘する法的機制を、「家族内贈与」「慈善目的贈与」それぞれの分野において明らかにしようと試みた。研究期間中に出来した新規の事象を取り込んだ結果、問いの重心はシフトすることになったが、贈与論を法学の分析に活用するという本研究の視角は高い有用性を発揮した。一方で家族内での無償のケア労働への報償の限界が、他方で遺留分廃止論にみられた慈善目的贈与との連関が明らかにされた。
本研究の意義は大きく4点に分けられる。第一に、わが国の2018年相続法改正の分析・発信を目的し、研究滞在中に複数の研究報告・論文執筆を行った。第二に、「無償ケア労働への報償」という課題につき、フランス法との照合から、通例批判される「相続時までの清算の先送り」にむしろ利点を見出した。第三に、フランス法における贈与分割の実態調査から、世代を跨いだ贈与の意義を明らかにした。第四に、フランスにおける遺留分廃止論につき、フィランソロピーの勧奨という政策動機を相対化しつつ、「遺留分による自由」という新たな視角を提示した。
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Travaux de l'Association Henri Capitant
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