研究課題/領域番号 |
17KK0063
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 哲志 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (50401013)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | 贈与 / フランス法 / 家族財産 / 報償 / 遺言 / 遺留分 / フィランソロピー |
研究実績の概要 |
引き続き例外的状況に翻弄された一年であった。昨年度末の緊急帰国後、フランスでロックダウンが続くなか再渡仏の機会を模索していたところ、所属機関から特別の許可を受けて6月下旬にようやくこれを実現することができた。もっとも、承認を受けていた研究専念期間との関係で、本研究費での滞在は3週間弱に限られ、中断していたインタビュー調査の再施も順調とはいかなかった。それでも共同研究者とは複数回の面会が叶い、取りまとめに向けた示唆を得ることができた。 いずれにしても、想定していたゴールに達し得たとはいえない状況にあり、予算残額は僅かではあるものの、延長を願い出たところである。 今年度の成果としては、《課題① 家族内贈与の網羅的把握》につき、編著書中の論文がある。相続放棄・代襲のメカニズムを通じた間接的な無償移転を素材とし、持戻し・遺留分の基礎理論から贈与分割の活用まで、詳細な分析を施している。 《課題② 慈善目的贈与における団体の機能》に関しては、雑誌論文がある。緊急事態宣言下、資料へのアクセスが不十分な中での執筆を余儀なくされたこともあり、寄付法制それ自体を扱う当初の目論みは達しえなかったが、法史部分の論証を厚く構えることで「死者の慈善の意思をいかにして実現するか」という基礎的な問いを深めることができた。 以上に加えて、所属機関でのセミナーにおいてではあるが、本研究の二つの視点をつなぎ、贈与法それ自体の刷新を企図した総括する報告を行った。とくに、2019年の遺留分報告書、2020年のフィランソロピー報告書、さらに日本の2018年相続法改正を比較の相の下に置いた。仏語バージョンを早期に仕上げ、共著論文へと昇華させることが期間延長後最終年度の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のとおり、中間的な成果を順調に還元しえていることはたしかである。しかし、(あえて理由は繰り返さないが、)調査に遅れを来たしており、最終成果の仕上げに至っていない。両要素を総合して「やや遅れている」との評価を付した。
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今後の研究の推進方策 |
認めていただいた1年の延長期間を活用して、オンラインでのインタビュー、研究打合せを実施し、最終成果につなげる。また、状況の好転が前提となるが、既に打診のあったフランスでの集中講義(今年度末を予定)の機会に、成果報告の場を得るものとする。
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