研究概要 |
本研究の目的は、海溝型巨大地震が100年から200年の間隔で発生してきたとされる南海道沖のプレート収束帯において、地震発生の事実を地形・地質学的に確認し検証することである。これまでの南海トラフに沿って発生したとされる巨大地震は、歴史資料の解読のみによって指摘されたものがほとんどで、自然科学的な方法で直接的に地震発生の証拠が示されているものはきわめて稀である。代表者は,西南日本外帯南部において隆起海岸地形・地質の調査研究を行ってきた結果、南海トラフに向かって突出する室戸岬や潮岬近辺には、ここ数千年間の地盤変動に伴って隆起した暖温帯石灰岩が分布しており、それらの堆積構造や成長過程を分析すれば、南海トラフに沿って発生した地震履歴を自然科学的な方法から切れ目なく解明出来る可能性が高いことを指摘してきた。本研究では,暖温帯石灰岩からコアを採取し,採取ポイント付近を構成する石灰岩の堆積深度を推定するため,石灰岩を構成する藻類やサンゴなどの古生物学的分析を行なった.また,採取したコアのうち,室戸岬の小ビシャゴ岩付近に付着する石灰岩から採取したコアサンプルについて,画像で区別できる不連続面を手がかりにして14C年代を測定した。その結果,石灰岩は,各層100年〜200年くらいの年代幅をもって,2730〜1520BP(暦年および△R未補正)の間顕著なhiatusなく成長し続けてきたことがわかった。本研究では,石灰岩の不連続面が,プレート間地震による振動的な地震隆起・沈降に伴う石灰岩の溶食に対応して形成されたと考え,化学的な変化を伴っているとすれば酸素・炭素同位体比にスパイク状のシグナルが出るという仮説のもと,同位体比を測定した。その結果,石灰岩の不連続面付近で同位体比が急激に低下するシグナルが検知され,現在さらなる分析を継続中である。
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