研究概要 |
はんだとのぬれ性が乏しいガラスの,メタライジングや特殊なはんだを用いないはんだづけの手法を開発するため,陽極接合の原理をはんだづけに応用すること(陽極はんだづけ)を試みた.ガラスと金属をはんだづけする際に,はんだを溶融させてから金属側の接合試片を通じてはんだとガラスの間に直流高電圧を加え,電圧印加時間による得られる継手の強度の変化を観察した.純スズをはんだに用いた継手では電圧の印加によって継手強度は上昇し,はんだづけ中の電圧印加がはんだとガラスの密着を改善したと考えられた.電圧印加時間が過長になると,得られる継手の強度は逆に低下した.破断後のはんだ/ガラス界面には白い反応生成物が付着しており,長時間の電圧印加で界面にスズ酸化物が過剰に生成して継手強度を低下させたと考えられた.はんだの合金元素が接合に与える影響を観察するため,実用合金のSn-3.5%AgとSn-3%Sbを用いて同様の実験を行うと,Sn-3%Sbはんだでは純スズ同様に電圧印加による継手強度の上昇が観察されたが,ガラス中で高い移動度を持つため,陽極接合に用いると電圧印加中にガラスに侵入して接合の進行に悪影響を与えるとされるAgを含むSn-3.5%Agはんだでは,継手強度は低いままであった.自然酸化によってスズの表面を覆っており,スズやその合金の接合に悪影響を及ぼすというスズの酸化物の,陽極はんだづけへの影響を低減させるため,スズ酸化物の結合力を弱めるハロゲン化処理をはんだ表面に加えて効果を観察した.HC1蒸気への曝露によって,はんだのガラスへのぬれは著しく向上した.陽極はんだづけにHC1蒸気で処理したはんだを用いると,接合界面へのはんだのぬれ広がりが著しく改善し,継手強度も上昇した.
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