研究概要 |
ガラスのろうづけ(はんだづけ)中のろう材/ガラス間への電圧印加の効果を調べるため,Kovar合金と,ホウケイ酸ガラスCorning7056のあいだに亜鉛箔・スズ箔をはさみ,アルゴンガス雰囲気中ではさんだ金属箔の融点以上に加熱してからKovar合金側を陽極として電圧を加えて,加熱温度と電圧の印加時間による接合状態の変化を観察した.結果,亜鉛箔を用いた場合,温度・電圧印加時間にかかわらず継手は得られなかった.スズ箔を用いた場合,接合温度673Kでは電圧を印加しない場合スズ/ガラス界面は室温に冷却後炉から取り出した時点で剥離していたが,電圧を印加することで界面が密着した継手が得られた.接合温度623Kでは電圧を印加しないでも界面が密着した継手が得られたが,継手界面の剪断強さを測ると電圧を印加した継手がより高強度であった.いずれの温度でも,過長な電圧印加時間ではかえってスズ/ガラス界面の剥離,せん断強さの低下が生じた.この原因としては,電圧印加に伴うスズ/ガラス界面におけるスズ酸化物の成長が考えられた. 電圧を印加しながらのガラスのはんだづけにはんだの合金元素が与える影響を明らかにするため,Kovar合金とホウケイ酸ガラスMatsunami#700を純スズ・Sn-3.5mass%Ag合金(Sn-3.5Ag),Sn-3mass%Sb合金(Sn-3Sb)合金の3種のはんだを用いてはんだづけした.接合温度は623Kとして,接合中に500Vの電圧を幾通りかに時間を変えて印加した.純スズとSn-3Sbを用いた継手では,はんだ/ガラス界面全面が密着した継手が得られたが,Sn-3.5Agを用いた継手では電圧印加時間によらず健全な継手が得られなかった.これはSn-3.5Ag中の銀が電圧印加中にガラス中に侵入し,はんだとガラスの界面で両者の密着を促進する電気二重層の形成を妨げるためと考えられた.
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