研究概要 |
敗血症性ショックおよび多臓器不全は,敗血症患者の致死的な原因とされている.細胞アポトーシスは敗血症の病態機構に重要な役割を演じているかもしれない.デス受容体が刺激されるとアダプター蛋白であるFADDがれクルーとされ,caspase-8が活性化され,アポトーシス・カスケードの"effector"プロテアーゼであるcasapase-3が活性化されアポトーシスが進行する.合成した短鎖干渉RNA(siRNA)は,RNA干渉により特異的に遺伝子発現を抑制する.そこで,多菌性敗血症のマウスモデルを用いて,caspase-8/caspase-3siRNAsおよびFADD siRNAの治療効果を検討した.多菌性敗血症はBALB/cマウスを回盲部結紮・穿孔により腹膜炎を起こさせ誘発した(CLP),生体内へのsiRNAデリバーは,CLP後10時間にtransfection reagent(Lipofectamine 2000)を用いて行った.ネガティヴ・コントロールとしてノンセンスsiRNAを投与したマウスを用いた.Caspase-8/caspase-3あるいはFADDのsiRNAs処置により,敗血症大動脈,心臓および肺組織にみられるDNAラダー形成やTUNEL陽性細胞の出現は妨げられた,さらに,著明な炎症所見は,これらのsiRNAs投与により改善した.CLPにより通常は2日以内で死亡したが,caspase-8/caspase-3あるいはFADD siRNAsで処置しておくとCLP施行後の生存率は著名に改善した.以上より,siRNAsでのFADDあるいはcaspase-8とcaspase-3の遺伝子を封じることが多菌性敗血症に対して顕著な防御作用を示すことが明らかとなった.本siRNAsでの敗血症に対する遺伝子治療は非常に有用である可能性が示唆された.
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