研究概要 |
本研究では,病原細菌における薬剤耐性遺伝子の分布状況を調べ,耐性遺伝子を詳細に解析することによって耐性遺伝子の進化と伝達のメカニズムを解明することを目的とした。そして,本研究の結果,以下の成果を得ることができた。 (1)広島県内で分離された赤痢菌臨床株の多剤耐性化機構を遺伝子レベルで明らかにした。 (2)パレスチナの糖尿病患者より分離した多剤耐性のProteus mirabilisが複数の薬剤耐性遺伝子を含む可動性遺伝因子であるSalmonella genomic island 1(SGI1)を保有していることを明らかにした。これは,Salmonella以外の菌種では初めての報告である。 (3)広島市安佐動物公園の動物より分離した株の薬剤耐性遺伝子保有状況を調べ,耐性化機構を明らかにした。今回発見した薬剤耐性遺伝子の中には,新たなタイプのβ-ラクタマーゼであるCMY-26やプラスミド性キノロン耐性遺伝子であるqnr,aac(6')-Ib-crなどが含まれていた。 (4)パレスチナの患者より分離したCitrobacter freundiiが新しいタイプの染色体性AmpCβ-ラクタマーゼ遺伝子を保有していることを明らかにし,CMY-37と命名した。このβ-ラクタマーゼは,第4世代のセファロスポリン薬であるセフェピムとセフピロムを分解する活性を有しており,臨床上重要な意味を持っている。
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