研究概要 |
最初にわれわれは,肝細胞特異的PTENノックアウトマウスを作成し,NASHの動物モデルを確立した。このマウスの初代培養肝細胞に過酸化水素を加えてから60分後には,cell viabilityが20%まで低下した。しかし,過酸化水素を加える前に,抗酸化剤であるN-acetyl cystein(NAC)をpre incubationするとcell viabilityが著明に改善し,また肝細胞内のreactive oxygen species(ROS)も約1/3に軽減した。またそれに伴って,NACはミトコンドリア障害も抑制した。次に,PTENノックアウトマウスに脂肪肝の発症や酸化ストレスを抑制する薬剤であるN-acetyl cystein(NAC),Eicosapentaenoic acids(EPA),Ursodeoxycholic acid(UDCA)を投与した。薬剤投与は離乳直後とし,40週齢と70週齢で脂肪性肝炎と肝癌の肉眼的,組織学的改善の有無を評価した。また,血中肝胆道系酵素,脂質,ラジカル生成能と肝組織における脂肪含有量,脂肪酸分画,抗酸化・脂肪酸合成酵素関連遺伝子の発現を10週齢,40週齢で検討した。NACは、ROSを消去することにより肝炎を抑制した。EPAとUDCAは,SREBP1cの発現減少により肝脂肪化を抑制し,オレイン酸/ステアリン酸比の低下とERKのリン酸化減少に基づいて発癌を抑制した。EPAとUDCAによる肝炎抑制の背景はROSの減少であったが,EPAはさらにAMPKα1の発現を増加させることにより,SREBPlcの発現を調整していることが明らかになった。以上,NAC,EPA,UDCAは,作用点は異なるが,ROSの消去に基づいてPten KOマウスの肝障害を抑制しており,これらの薬剤を併用することによりNASHを効果的に治療できると考えられた。
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