研究概要 |
スキルス胃癌の病態と、その病態に基づいた新しい分子標的治療の有用性を検討した。スキルス胃癌は、チロシンキナーゼ型fibroblast growth factor receptor 2(FGF-R2)と相同性のあるK-samII遺伝子が増幅し増殖に関与している。また、TGFbeta/TGFβ receptor はスキルス胃癌細胞の浸潤転移に関与している。そこでこれらFGF-R2/K-samIIおよびTGFβ receptorに対する阻害剤を用いた分子標的治療の有用性を検討した。【材料と方法】I.FGF-R2/K-samII阻害剤の検討:FGF-R2/K-samIIリン酸化阻害剤Ki23057(2003年特許)を用い、胃癌細胞の増殖抑制効果やFGF-R2,ERK,Aktリン酸化阻害を検討した。胃癌腹膜転移モデルを作成し、Ki23057経口投与による転移抑制効果を検討した。II.TGFβ receptor阻害剤の検討:TGFβ receptor阻害剤A-77を用いた。胃癌リンパ節転移モデルを作成後、A-77投与群、S-l投与群、A-77・S-l併用群間の腫瘍径と転移リンパ節数を検討した。【結果】Ki23057は、スキルス胃癌細胞の発現するFGF-R2,MAPK,PI3Kリン酸化を阻害し,癌細胞増殖を抑制した。Ki23057投与により、腹膜播種転移マウスの生存率を有意に延長した。TGFβ receptor阻害剤A-77は非投与群に比し、A-77投与群、S-l投与群、併用群において胃腫瘍径およびリンパ節転移が有意に抑制された(2006年特許)。【結論】FGF-RI/K-samII阻害剤(Ki23057)およびTGFβ receptor阻害剤(A-77)は、スキルス胃癌転移に対する分子標的治療に有用であることが示唆された。
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