研究概要 |
FGF-R2リン酸ヒ且害剤Ki23057はスキルス胃癌細胞増殖を抑制する スキルス胃癌細胞株2株(OCUM-2MD3,OCUM-8)および非スキルス胃癌細胞株3株(MKN-7,MKN-45,MKN-74)を用い、Ki23057が各紬胞株の増殖能に及ぼす影響を検討した。 Ki23057はスキルス胃癌細胞株の増殖を抑制するが、高分化型胃癌細胞の増殖は抑制しない。すなわち、Ki23057は30 nM以上濃度にてFGF-R2/K-samIIを発現するスキルス胃癌細胞株OCUM-2MD3,OCUM-8の増殖を有意に抑制する。一方、Ki23057は高分化型胃癌細胞の増殖を抑制しない。以上より、FGF-R2/K-samIIリン酸化阻害剤Ki23057はスキルス胃癌細胞の増殖を特異的に抑制する事が明らかになった。 FGF-R2リン酸化阻害剤Ki23057はスキルス胃癌のMAPキナーゼ系やPI3キナーゼ系のリン酸化を阻害する western blotにて各細胞株のK-samII発現を検討すると、スキルス胃癌細胞はK-samII発現を認めたが非スキルス胃癌細胞には認められない。Ki23057投与によりスキルス胃癌細胞株のFFGF-R2/K-samIIのリン酸化が抑制されるが、非スキルス胃癌細胞は抑制されない。次に、FGF-R2の下流シグナルを検討すると、Ki23057はスキルス胃癌細胞の発現するMAPK経路のERKリン酸化、PI3K経路のAktリン酸化を抑制した。すなわち、スキルス胃癌細胞株(OCUM-2MD3)に種々の濃度のKi23057を投与しp-ERK, ERK, p-AKT, AKTの発現の差をWestern blot法で検討すると、リン酸化ERKのp-ERKは100nMのKi23057より抑制され1000nMで発現がほとんど認めないのに対し、totalのERKは発現変化しない。また、P-AKTも同様に1000 nMでリン酸化が抑制されるのに対して、total AKTは変化しない。OCUM-8でも同様にKi23057によるリン酸化抑制がみられる。一方、分化型胃癌細胞株ではp-ERK、ERKともに抑制されない。これらのことより、Ki23057のFGF-R2リン酸化阻害作用が、MAPキナーゼ系やPI3キナーゼ系を抑制しアポトーシスを誘導することでスキルス胃癌細胞の増殖を抑制していることが示唆される。
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