研究概要 |
非小細胞肺癌の治療成績向上のために,抗腫瘍剤の有効性に関連する分子マーカーについて包括的解析を行い,個々の肺癌患者に対して抗腫瘍剤を選択する「オーダーメイド化学療法」を我々は臨床実用している(Huang, et. al., Future Oncol 2006).5-FUに関与する分子マーカーとして,その標的酵素TSと活性化酵素OPRT,分解酵素DPDがある.経口5-FU抗腫瘍剤を術後投与した非小細胞肺癌では,TS低発現とOPRr高発現,DPD低発現が,独立した予後良好の因子であることを我々は示した(Nakano, et. al., Br J Cancer2006).一方,epidermal growth factor receptor(EGFR)遺伝子の変異がEGFR特異的TKIの有効性に関与するため,パラフィン標本から簡便で高感度にEGFR遺伝子変異を解析するプロトコールも我々は開発した(Liu, et. al., Oncol Rep 2006).アポトーシスも抗腫瘍剤の有効性に影響しており,我々はアポトーシスに関与するp53についてもその機能調節遺伝子と標的遺伝子を包括的に解析し(Huang, et. al., Future Oncol 2007),HAUSPの発現減弱が,p53蛋白と標的遺伝子p21とbaxの発現減弱に関わることをみいだした(Masuya, et. al., J Pathol 2006).更に腫瘍内E2F1過剰発現により,TSとアポトーシス抑制因子survivinの発現が誘導されていること(Huang, et. al., Clin Cancer Res 2007),survivinの機能がスプライスバリアントにより異なることも明らかにした(Nakano, et. al., Br J Cancer 2008).また,cDNAマイクロアレイによる網羅的解析により,Wntシグナルが癌に関与することを我々はみいだし,非小細胞肺癌における臨床的研究でも,腫瘍内Wnt1発現がc-MycやMMP-7などの標的分子の発現を誘導し,予後不良因子であることも明らかにした(Liu, et. al., Lung Cancer 2007; Nakashima, et. al., Oncol Rep 2008).今後も我々は更に多くの分子マーカーの同定を目指し,オーダーメイド化学療法を肺癌診療で広く役立ててゆきたい.
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