研究概要 |
海洋観測においては,洋上の調査船からの採水装置の降下や遠隔無人探査機の運用のために垂直に繰り出されたトルクバランスケーブルが幅広く用いられるが,キンクや素線乱れなどのトラブルの発生が,国内外で多数報告されている。このようなトラブルが発生した場合,ケーブルの不具合部分を切断・再接合することで対処しているが,調査活動の休止に伴う損失は非常に大きい。このため本年度は海洋調査機器の運用中に発生するキンクの原因となるケーブルに加わるトルクの印加要因を理論的/実験的手法の両面から検討し,ストランド諸定数の最適化による非捻回ケーブル開発手法の確立を進めた。 理論計算においては,ケーブル捻れの発生を誘発するケーブル曲げ時のストランド軌道変化について,実運用ケーブルの諸定数を用いてシミュレーションを実施した。この結果,ケーブルが曲げられた場合にはストランドは直線状態とは異なる軌道へと変化し,この変化量は微小ではあるが,ケーブル各層での変化の差からケーブル捻れが発生することを定量的に示した。またこの計算手法を海洋開発で一般的に用いられる二重鎧装ケーブルに加えて三重鎧装ケーブルにも適用し,計算手法の妥当性を検証した。 ケーブル捻れの計測は,採水装置降下用の二重鎧装ケーブルのフリーフォール試験に合わせて実施した1。この試験ではケーブル下端部にコンパスを取り付け,ケーブル降下深度と回転量の関係を示した。 上述のような理論/実験の両面からケーブル捻れの発生原因とその根本的な対策となるケーブル設計指針の確立を総合的に進めた。
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