研究概要 |
平成18年度の研究において、膵臓癌細胞株、KP-1N,KP-1NL,PK-1,Miapaca2は、いずれもSonic hedgehog(SHH)を発現していることを報告し、これらの細胞株においてShhプロモーターは低メチル化状態にあることを明らかにした。 平成19年度はPA-TU-8988T,HUP-T3の2細胞株がSHHを発現していないことを見出し、これらの細胞株をDNA脱メチル化剤である5-Aza-2'-Deoxycytidineにて処理することによリ、作用時間依存的にSHHの発現が上昇することを同定した。 同時に、5-Aza-2'-Deoxycytidine処理を行った各細胞株より経時的にゲノムDNAを抽出し、メチル化非感受性酵素MspIとメチル化感受性酵素HpaIIにて消化後、PCR法にてDNAを増幅することにより、SHHの発現はプロモーター領域のメチル化によって制御されていることを明らかにした。 また、SHH経路の主要なシグナル伝達因子である転写因子GLI1に着目し、GLI1-Estrogen Receptorキメラ遺伝子を安定発現するKP-1N細胞を作成し、Estrogen(E2)処理によって発現誘導される遺伝子を網羅的に解析した。 そめ結果、胃型gel forming mucinの一種であるMUC5ACが、GLI1の直接的な転写標的因子であることを見出し、膵臓癌組織においても、SHH発現とMUC5AC発現に強い相関性があることを明らかにした。 以上より、SHHは膵臓癌細胞における形質発現に重要な液性因子であり、MUC5ACを含め同疾患の診断、治療標的として重要な因子となりうる可能性が明らかとなった。
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