研究概要 |
昨年度我々は、65例のびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)において、tissue microarray(TMA)法によりarray slideを作成し、種々の抗体を用いた免疫染色を行い、生物学的予後因子の解析を行った。 その結果、GC type(N=31),non-GC type(N=34)に分類することができ、5年生存率は高齢者、若年者に関わらずGC群が生存率がよい傾向にあった。またMUM1陽性群の5年生存率は28%であり、MUM1による層別化は予後判定に有用と考えられた。BCL6の免疫染色の結果、BCL6陽性例はrituximab導入後の生存率改善がなく、一方、BCL6陰性例はrituximab導入後に生存率の改善が認められた。これらの結果からGC群、non-GC群の分類や、MUM1とBCL6は生物学的因子、予後因子として臨床的にも有用であると考えられた。これらの結果を踏まえ今年度は同様にT細胞性リンパ腫に対し、生物学的予後因子の解析を行った。T細胞性リンパ腫は一般的にB細胞性リンパ腫より予後が不良であり特にperipheral T-cell lymphoma unspecified (PTCL-u)は、分子生物学的に不明な点が多い。今回我々は、PTCL-u15例と種々の組織型を含む52例のT細胞性リンパ腫についてtissue microarray(TMA)法によりarray slideを作成した。T細胞の分化にかかわり、T細胞性リンパ腫の予後との相関が示唆されているケモカインレセプターCCR3, CCR4, CXCR3について免疫染色を施行した。PTCL-u15例中8例CCR4陽性、2例CCR4陽性、3例CXCR3陽性であった。症例数が少ないこともあり今回の結果からは予後に関する知見は得られていない。現在PTCL-u以外のT細胞性リンパ腫に対するケモカインレセプターと、他の因子につき検討を施行中である。
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