研究課題/領域番号 |
18K00388
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2018年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | Carson McCullers / Judith Butler / Black Lives Matter / 潜勢力 / インターセクショナリティ / 交差性 / ブラック・フェミニズム / 唯物論 / 人種主義 / ジム・クロウ / 黒人文学 / 奴隷制 / アボリショニズム / 公民権運動 / アメリカ合衆国 / 警察暴力 / Zora Neale Hurston / James Weldon Johnson / Jean Toomer / ハーレム・ルネサンス / 人種解放 / 奴隷制度 / アメリカ黒人 / 再建期 / Harriet Beecher Stowe / Charles Chesnutt / Albion Tourgee / Freedmen's Bureau / Harriet Jacobs / 南北戦争 / 黒人 / 人種関係 / 文学表象 |
研究実績の概要 |
Covid-19による文献調査の滞りのため、令和4年度の延長が認められた本研究では、昨年度に引き続き、米国のアーカイヴや図書館に出張する機会を窺う一方で、論文と口頭による成果公開に専念した。出張に関しては、文献調査は依然不可能だったものの、Modern Language Associationへの渡航がかない、後述のブラック・フェミニズムの米国における専門家と複数の対話の機会をもつことができた。 最も主要な成果としては、インターセクショナリティ(交差性)という概念を、アメリカ社会思想史のなかに位置づけた『現代思想』掲載の論考である。当該の概念は、1970年代中盤に形成された「ブラック・フェミニズム」の中核をなすものであり、殊にブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動の知的・政治的動力源と考えられているものである。黒人エリートの近年の動向には、この概念に見られるように、女性知識人が主導する重要な一角がある。同論考ではその意義を詳らかにした。 他方、本研究の主題となる個別の事績、作品、人物、思潮の意義を分析してきた途上において、その重要性が認識された「潜勢力」なる鍵概念を主題とした論考執筆・口頭発表を行った。日本英文学会大会では、「文学の潜勢力――分節を問う、生成を辿る」と題したシンポジウムを企画し、基礎理論的な考察を深化させた。潜勢力とは、支配体制下において生を持続する人間が、その内面構造で発揮する潜在的な力を意味する。人間の抵抗として、了解された形式ではない行為のうちに表出しうるそうした力を、アメリカ南部女性作家Carson McCullersの作品のうちに見出す論考、また当該の力がいかに人間個体のジェンダーや人種の実体的な現れに関わっているかを理論化したJudith Butlerの著作について書いた書評論文も、この基礎理論上の発見をカヴァする主要な成果ということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の延長を決断した昨年とほぼ同様であるが、研究そのものが遅れているということは必ずしもできず、国内では成果を順調に公開している。さらに本研究で理解の進んだ理論的な基軸の部分、具体的には「潜勢力」や唯物論的分析法に関しても、派生的な研究成果を産むことができた。しかしながら、当初より計画していた合衆国のアーカイヴ調査がいまだ滞った状況である。よってこの区分を選択したが、引き続き、第4期-第5期文献研究、つまり20-21世紀における黒人エリートならびに黒人運動の今日的水準を対象とした調査を遂行するために、米国に出張する機会を探し、万全の形で本研究を完了したい。
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今後の研究の推進方策 |
資料収集を実行し、完璧な形で本研究を完遂するため、年度終盤、本研究の1年の再延長を申請し、採択された。よって、令和5年度には、米国の大学や図書館と連絡をとりながら、長期休暇中にリサーチの遂行を果たしたい。それと同時進行し、本研究の蓄積を土台とした著書の執筆を2023年中に完了する予定である。
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