研究課題/領域番号 |
18K00480
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 中央大学 (2021-2022) 香川大学 (2018-2020) |
研究代表者 |
金澤 忠信 中央大学, 理工学部, 教授 (20507925)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ソシュール / 伝説・神話研究 / 歴史比較言語学 / ニーベルンゲン / トリスタンとイゾルデ / ゲルマン英雄伝説 / ギリシア神話 / 構造主義 / 記号論 / 伝説・神話 / 言語思想 / 19世紀末・20世紀初頭 / ジュネーヴ |
研究実績の概要 |
本研究は、フェルディナン・ド・ソシュールが19世紀末から20世紀初めに行った古代ギリシア・ローマ神話、中世英雄伝説、北欧神話に関する研究の動機、方法論、目的を未公刊の手稿から読み取り、同時期に行っていた歴史比較言語学、一般言語学、アナグラム研究との関連性において明らかにするというものである。 これまでに、中世英雄叙事詩、北欧神話、ギリシア神話に関する書籍、古典語・古語の辞書、ゲルマン諸国家に関する歴史書などを購入した。2018年5-7月に香川大学において、ソシュールの伝説・神話研究をテーマにした一般向け公開講座を担当した。2018年8月と2019年8-9月にジュネーヴ図書館で関連資料を収集・購入した。特にアメデ・ティエリのアッティラ研究に関する手稿を見つけ、論文にまとめた。 2020年度は、新型コロナウイルス感染症への対応(遠隔配信授業)、日本フランス語フランス文学会中国・四国支部長の職務のため、予定していた成果をあげることができなかったが、同学会中国・四国支部大会(オンライン開催)で発表し、それをもとに支部会誌に論文を投稿した(2021年6月公刊)。 2021年度は研究期間を1年延長したが、コロナ禍が続くなかでの勤務先の異動、妻の妊娠・出産、その後の家事・育児のため、十分な研究時間を確保することができなかった。それでも年度末、『中央大学人文研紀要』に投稿した論文(2022年9月公刊)において、ソシュールの伝説・神話研究の方法論と「徴候的読解」を比較した。2022年度も育児に追われ、研究がなかなか捗らなかったが、やはり年度末に『中央大学人文研紀要』に論文を投稿した(現在校正・編集作業中)。 2023年度は、研究期間を再延長し、研究成果をまとめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ジュネーヴ図書館に収蔵されている関連資料のうち、初年度に資料番号Ms. fr. 3958-3959(2,119ファイル)をTIF形式で入手した。2年目は、1996年に発見された比較的新しい資料(Archives de Saussure)を中心に収集した。 新資料のうち、アメデ・ティエリの『アッティラとその後継者たちの歴史』に関する手稿から、伝説・神話研究の方法論(主観的想像の排除および客観的事実の検証)を読み取ることができた。伝説は歴史にもとづくという前提条件かつ最終的結論を「ソシュールの伝説・神話研究における歴史の概念」(『香川大学経済論叢』第92巻第3号、2019年12月)において公表した。 2020年度は「歴史と伝説──ソシュールの伝説・神話研究」(日本フランス語フランス文学会中国・四国支部会誌『フランス文学』第33号、2021年6月)において、ソシュールの伝説・神話研究の位置づけ、その方法論および目的について検証・解説したうえで、現代フランスの歴史学および文学研究と比較しながら、ソシュール伝説・神話研究の現代性について論じた。 2021年度は、「ソシュールの伝説・神話研究と推論的範例」(中央大学『人文研紀要』第102号、2022年9月)において、ソシュールの伝説・神話研究の方法論の特殊性を、カルロ・ギンズブルグが「推論的範例」の代表としてとりあげたフロイトの「徴候的読解」との対比によって明らかにした。 2022年度は、「ソシュールとレヴィ=ストロース、ジークフリートとオイディプース」(中央大学『人文研紀要』、2023年刊行予定)において、ソシュールとレヴィ=ストロースの神話研究を比較して両者に共通点を見出すキム・スンドの論考を批判するかたちで、伝説は歴史的にもとづくというソシュールの伝説・神話研究の根本原理をあらためて検証した。
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今後の研究の推進方策 |
2018・2019年度にジュネーヴ図書館で収集した2,000枚以上の手稿資料の読解作業を続行・完了する。『ニーベルンゲンの歌』研究に関しては一つの論文としてまとめた。『トリスタンとイゾルデ』やギリシア神話(特にテーセウス)などに関しては、『ニーベルンゲンの歌』研究との共通点および相違を明らかにする。そしてそれらの伝説・神話における「細部」の比較・対照作業を、ソシュールを引き継ぐかたちで仕上げる。 研究の過程で、現代フランスの歴史学・文学研究およびフロイトの「兆候的読解」との比較によって、ソシュールの伝説・神話研究の特徴が浮き彫りとなることが判明したため、この方向でも議論を進めていく。クロード・レヴィ=ストロースの神話研究との比較については、2023年秋頃刊行予定の論文で論じたが、まだ序論的な段階にすぎない。今後さらに論を展開し、さらにウラジーミル・プロップ、マックス・リュティとの比較も行う。 2021年度より中央大学に赴任し、同大学の人文科学研究所の一員となった。その研究プロジェクトの一環で、研究叢書『幻想的存在の東西』に「ソシュールの伝説・神話研究における魔物」(仮) を寄稿する予定である(2023年8月原稿提出締切)。 最終的には、前回の科学研究費補助金(2013~2015年度基盤研究(C)「19世紀末におけるソシュールの政治思想についての文献学的研究」課題番号25370087)によって究明したソシュールの政治的言説と、伝説・神話研究とを並置するかたちで論じ、さらに一般言語学、アナグラム研究、歴史比較言語学との関連性についても考察する。
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