研究課題/領域番号 |
18K01322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
安達 光治 立命館大学, 法学部, 教授 (40348868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 重罪合意罪 / 謀議罪 / カロリーナ刑法典 / 領邦刑法典 / 重罪等合意罪 / 合意罪 / ドイツ刑法 / テロ等準備罪 / 共謀罪 / 1943年刑法改正 / ドイツ刑法草案 / 意思刑法 / 犯罪・テロ団体結成罪 / 組織的犯罪集団 / 犯罪結社罪 / テロ結社罪 / 重罪合意罪・結社罪 / テロ等準備罪(共謀罪) |
研究実績の概要 |
2022年度は、ドイツ刑法における謀議罪の歴史的経緯に関する検討を行った。具体的には、Ulrich Fieber, Die Verbrechensverabredung, § 30 Abs. 2, 3. Alt. StGB, 2001のうち、第1章「重罪合意罪の可罰性に関する歴史的展開」を翻訳の上分析し、1532年のカロリーナ刑事法典以来の謀議行為の処罰に関する歴史的経緯に関して調査した。その結果、以下のことを知り得た。 同法典に端を発するドイツの近世刑法においては、謀議行為の独立した処罰規定は、一般的な謀議罪としても、特別規定としての重罪合意罪としても存在していなかった。もっとも、イタリア刑法に由来する謀議(Komplott)概念はすでにドイツにおいても知られていたのであり、カロリーナ刑事法典148条に規定される謀殺罪に関し、本罪における主観的共犯概念を基礎づけるために謀議理論がとられていた。その後、謀議罪は、1794年のプロイセン一般ラント法を経て、19世紀に入り、いくつかの領邦刑法典で規定されるに至ったものの、19世紀後半のリベラルな政治思潮の影響を受け、1871年のドイツ帝国刑法典には、謀議処罰の一般的規定は設けられなかった(内乱・大逆罪には規定があった)。その後、第1次世界大戦を経て、1922年に共和国保護法(共和国防衛法)の制定により、謀殺罪について合意罪の処罰規定が創設されたが、これは、カロリーナ刑事法典148条の謀殺に関する謀議処罰の復活とみることができる。 その後、ナチス時代の1943年に重罪合意罪の規定が創設されたが、この規定は、戦後に部分的な修正を経て存続し、1975年に施行された刑法総則の全面改正においても特段の修正を受けることなく、現在に至っている。今後の研究では、このような戦後の展開について検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、ドイツ刑法における共謀罪に相当する規定、すなわち、刑法30条2項第3選択肢の重罪合意罪及び129条・129条aの犯罪団体(テロ団体)結成罪の歴史的経緯と現代的展開について検討するものである。これまでの研究においては、1871年ドイツ帝国刑法制定後の改正草案にみられる謀議罪、合意罪の規定を分析し、現行の重罪合意罪の制定の経緯を跡付けることができたが、2022年度の研究実績に示した本罪をめぐる歴史的経緯及び現代的展開については、関連文献の分析に時間を要していることもあり、公表論文の執筆に至っていない。 また、我が国のテロ等準備罪の評価ともかかわって、犯罪団体(テロ団体)結成罪の現状について分析する必要がある。これについては、テロ等準備罪の中心的要件の一つである「組織的犯罪集団の関与」との関連で、ドイツ刑法129条・129条aにおける「団体(Vereinigung)」につき検討を行ったが、本罪の運用状況などに関しては、新型コロナ感染症による渡航制限の影響もあって踏み込んだ調査、検討ができてない。
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今後の研究の推進方策 |
重罪合意罪の歴史的経緯及び現代的展開については、本罪の解釈論的検討も含めて、一定の準備作業を進めていることから、所属機関の紀要に研究成果に関する論文を公表し、事情が許せば、共謀罪に関する一連の研究と併せ、著書を公刊することを計画する。 犯罪団体(テロ団体)結成罪については、現在までの進捗状況を踏まえ、これまでの研究活動で収集できた文献を分析し、特に、テロ団体結成罪に関する解釈論を中心に論考を執筆、公刊する(作業の進捗によっては著作に組み込む)。ドイツの現地調査に関しては、次年度が最終年度に当たることを踏まえつつ、助成金の残額なども考慮して実施につき判断する。
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