研究課題/領域番号 |
18K01605
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
塩路 悦朗 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50301180)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 非伝統的金融政策 / 日本国債 / 金利 / 日本銀行 / 実証分析 / 国債先物オプション / 為替レート / インフレーション / コロナ / 財政赤字 / 金融危機 / 金融機関 / ニュース |
研究実績の概要 |
2022年度中は国際学会・研究会で4回の研究報告を行った。また、国内学会のパネル討論でパネリストを務め、研究成果を紹介した。主な研究内容は次の4つである。 (1) 国債先物オプション市場の研究をさらに進めた。分析対象をコロナ禍初期から直近までに拡張した。その結果、2020年3月の金融危機時に日本銀行の長短金利操作政策が国債市場を安定化させる役割を果たしたことを明らかにした。 (2) 2022年度中は日本銀行の長短金利操作政策の持続可能性に初めて、広く一般に疑義が呈された。そこでこれまでの研究を拡張し、日本国債市場において日銀が設定した長期金利の上下限に加わる市場圧力をテーマとした新たな研究を行った。そこでは長期金利自体に加え、日銀による長期国債売買に関する情報を組み合わせた「債券市場圧力指標」という新たな概念を提案した。この指標をデータから推計し、その変動要因を分析した。研究論文の第1稿をまとめ、国際学会に投稿した。 (3) 2022年度中は日本国内で物価高が進み、社会問題となった。特に円安と一次産品価格の世界的高騰の2大要因が注目された。そこで、研究代表者がこれまで行ってきた、為替レート・原油価格が国内物価に与える影響に関する研究を基礎とした新たな研究を行った。データセットを直近まで延長し、これら2大要因の足下のインフレ動向や家計の予想インフレ率に与える貢献度を推計した。 (4) 2022年度中の急速なインフレの中で、家計のインフレ実感やインフレ予想も急速に上方修正された。この経験を受けて、月次統計である消費者物価指数や家計の予想インフレ率の予測に、速報性に優れた日次データ(日経CPINOWなど)を役立てることができるかを分析した。研究論文の第1稿をまとめ、それについて他の研究者から受けた助言を基に改訂を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2本の新たな研究論文の第1稿を完成させた。国際学会等でこれまでの研究成果を報告し、国内外の研究者から今後の研究の方向性に関する多くの助言を得ることができた。またそれに基づく追加分析や論文改訂を進めた。また2022年度は日本国債市場や日本のマクロ経済動向にとって大きな転機となったが、これまでの研究の蓄積を活かし、最新の動向を反映した新たな分析を機動的に行うことができた。 上記(1)の国債先物オプション市場に関する研究成果をEconometrics and Statistics 第5回国際コンファレンス(Ecosta 2022)で報告した。 (2)の債券市場圧力指標に関する研究論文は2023年度中に2つの国際学会で報告することが既に決まっている。 (3)の為替レートや原油高が国内物価に与える影響に関する研究成果を日本経済新聞の「経済教室」で紹介するとともに、日本金融学会秋季大会のパネル討論で報告した。また、はまぎん総合研究所発行の雑誌中で成果の一端を広く一般に紹介する機会を得た。 (4)のインフレ率と予想インフレ率に関する実証研究の成果を次の3つの国際学会・研究会で報告した。①Econometric Theory and Applications第16回国際シンポジウム (SETA2022)、②Computational and Financial Econometrics第16回国際コンファレンス (CFE2022)、③一橋大学経済研究所共同利用・共同研究拠点プロジェクト「動学的パネルデータモデルによる多国間経済及びファイナンス波及分析」研究集会。また2023年度中に国内学会(日本経済学会春季大会)で報告することが決定している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は上記(2)、(4)の研究を中心に進める。 (2)の日本国債市場に関する研究については、2023年5月の韓国経済学会・高麗大学国際コンファレンスと8月のEconometrics and Statistics 第6回国際コンファレンス(Ecosta 2023)で報告予定である。そこで関連分野の専門家から助言を得て、追加検証と論文改訂を進める。改訂稿を所属大学内外のワーキングペーパーとするとともに、国内外に研究報告の機会を求める。さらに改訂を進め、年度内には完成稿を国際的学術誌に投稿する。 (4)のインフレ率と予想インフレ率に関する研究を日本経済学会2023年度春季大会で報告し、指定討論者や参加者から助言を受ける。それを基に推定手法の改善と内容の充実を図り、年度内には完成稿を国際的学術誌に投稿する。 いずれの研究とも最新の経済動向を理解するために始めたものであり。今日的意義の大きなものである。常にデータセットを更新して今後の新しい展開を反映させたものにするように心がける。特に、日本銀行の非伝統的金融政策を巡る方針に2023年度中に大きな変更があった場合には、それを研究内容に反映させるようにする。また、研究成果を広く一般に還元するための機会をできるだけ求めるようにしたい。
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