研究課題/領域番号 |
18K02293
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
高橋 亜希子 南山大学, 人文学部, 教授 (90431387)
|
研究分担者 |
和井田 清司 武蔵大学, 人文学部, 教授 (50345542)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2018年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 高校 / 探究 / 総合的な探究の時間 / 内発的 / 新高校学習指導要領 / 学校改革 / 高大接続改革 / 青年期 / 探究学習 / 大学入学共通テスト / 新学習指導要領 / 学習指導要領 / 授業 |
研究実績の概要 |
2022年度は、新学習指導要領への対応と高校の内発的な学校改革という研究テーマに関連して、(1)B高校の中高一貫校化と探究学習の実践に関する論文の公刊、(2)高校の学校改革の背景としてのスクール・ポリシー・スクール・ミッションの導入過程の分析に関する論文の公刊、学会でのラウンドテーブル開催、(3)B高校の中高一貫化の過程に関する再調査、を中心に行った。(1)に関しては、B高校の探究学習の実践と中高一貫校化の過程について、改革の中心となったE校長と中高一貫化の過程のキーパースンのネットワークの在り方に焦点をあてて分析し、論文を執筆・公刊した(髙橋, 2022)。(2)に関しては、2021年度の文部科学省の「令和の『日本型学校教育』」答申による高校におけるスクール・ミッション、スクール・ポリシーの義務化の導入過程に関して、中央教育審議会の「新しい時代の高等学校教育の在り方WG」と先行する教育再生実行会議「高校改革WG」の資料、議事録を分析対象とし、答申に至るまでの議論の経緯を分析した。6月に同テーマに関する論文を公刊し、8月に第81回日本教育学会においてラウンドテーブル「高校のスクール・ミッション、スクール・ポリシーは機能するか―導入の過程・文脈と学校や自治体の現状の検討-」を開催した。(3)に関しては、B高校を2022年3月に再訪問し調査を行い、E校長の学校改革とその信念の背景について、E校長の同僚であった3名の教諭にインタビュー調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、内発的学校改革に関する事例分析論文の公刊、高校の学校改革実施に関する今後の背景となるスクールミッション、スクールポリシーに関する分析論文を公刊と学会でのラウンドテーブルの開催、B校の追加調査を行うことができた。2022年の目標を達成し、研究としては順調に進行している。 スクールミッション、スクールポリシーの導入過程の分析については、各学校の現状に合わせた授業の実施に向け、教育課程、時数などを「柔軟化・大綱化」するという教育再生会議での議論が、同時期の自民党の教育再生実行本部第12次提言に記載されたスクールポリシーの策定提言の方向性に置き換えられ、中教審では各高校のSM、SP策定の義務化が求められていった経緯を明らかとした(髙橋, 2022)。内発的学校改革の事例分析の対象としたA校、B校とも自校の存在意義を再確認、再検討し、目指す生徒像、カリキュラムの検討を行っており、SM、SPと内容としては似通っているように見える。しかし、SM、SPにおいては、各高校の主体的な取り組みを支える基盤整備の部分は議論の過程で消失した上、各高校が教育委員会に振り分けられた役割(スクールミッション)を実行し、生徒募集に関する努力は各高校に責任を負わされる方向性が見え、各高校が内発的な改革を行うにはむしろ弊害となるのではないかと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
第1に内発的学校改革の観点から、A校とB校の2事例の共通点、相違点等の比較分析を行い、内発的学校改革についての整理と提言を行いたい。2校とも、トップダウンでなく、構成員が参加し話し合う機会があること、また、その機会を形成するキーパースンの存在が学校改革に大きく寄与している。そのような点について、内発的発展の理論と照らし合わせて検討し、研究の総括を行いたい。2022年度も同じ目標を挙げたが、スクールミッションとスクールポリシーの分析を先に行う必要があったため、改めて2023年度の目標としたい。 第2にE氏の学校改革とその信念の背景について、分析を行いたい。E氏は校長としてB高校の中高一貫化を推進した人物である。和井田(2005)は内発的学校改革が生じる条件として、①改革の権限を学校現場に位置付け、地域や学校の風土に適合した多系的な改革の方向性を奨励すること、②学校改革において教師以外の構成員の参加を検討すること、③キーパーソンのネットワークを主体として改革を推進すること、④相互作用を通した相利共生の観点、の4点を挙げた。B校の改革は上記の4点とも当てはまっており、E氏は探究学習を中心とした中高一貫化という学校改革のコンセプトを提示しただけでなく、外部の資源とキーパーソンを繋ぐ独創的なネットワークの形成や教育委員会との交渉、生徒の学習を中心に置き、地域の課題と学校を繋ぐことなどを行い、学校の課題を社会文脈と連続するように改革した。 E氏は残念ながら2022年2月にご逝去されたが、2023年3月にE校長の同僚であった3名の教諭にE校長の来歴とB高校での改革についてインタビュー調査を行った。E氏の前任校の状況を含めてインタビューした。それらの資料を基にE氏の学校改革とその信念の背景について、分析を行いたい。
|