研究課題/領域番号 |
18K03210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2019-2021) 京都大学 (2018) |
研究代表者 |
山名 俊介 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50633301)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | p進L関数 / 保型形式 / アイゼンシュタイン級数 / ユニタリ群 / フーリエ・ヤコビ係数 / 肥田理論 / CMテータ級数 / 周期 / 保型形式の周期 / L関数の特殊値 / 肥田族 / ヴェイユ表現 / 微分作用素 / 志村多様体 / 楕円曲線 / ガロア表現 / 捻り三重積L関数 / 例外零点 / 保形表現 / ランキン-セルバーグ法 / 三重積L関数 / 基底変換 / Stark-Heegner点 / 特殊値 / ヒルベルト-アイゼンシュタイン級数 / モジュラー形式 / L関数 / 志村曲線 / 高さ関数 / Euler系 / ランキン・セルバーグ法 / 岩澤理論 / アラケロフ幾何 / ジーゲルモジュラー形式 / Boecherer予想 |
研究実績の概要 |
正則保型形式は主として、ジーゲル保型形式やU(n,n)のエルミート保型形式のような管状領域を持つ群の場合に研究されて来ました。非管状領域の保型形式があまり研究されていない理由は、Fourier展開がないことです。管状領域の正則保型形式のFourier係数にHecke作用素が作用し、L関数やGalois表現に結びついて豊富な情報をもたらすことは、一変数保型形式の理論においてよく知られています。多変数の場合にもテータ関数のフーリエ係数には二次形式の表現数が現れ、Leech格子などのEuclid格子の研究に応用されています。テータ級数をアイゼンシュタイン級数に結び付けるジーゲル・ヴェイユ公式は、二次形式論だけでなく保型表現論でも重要な役割を果たしています。 筆者は本年度にU(2,1)などの非管状領域を持つユニタリ群の正則保型形式の研究を進めました。前半ではU(2,1)の重さ1のアイゼンシュタイン級数とテータ級数のジーゲル・ヴェイユ公式を証明し、両辺のフーリエ・ヤコビ係数を計算しました。後半にはU(2,1)とU(1,1)の正則保型形式に関するp進L関数を構成する研究に取り組みました。U(2,1)の保型形式とU(1,1)の保型形式の積のU(1,1)上の積分は、(多くの数学者により最近その証明が完成した)市野-池田公式によりL関数の中心値と局所積分の積になります。この等式からp進L関数を構成するには、U(2,1)の保型形式からU(1,1)の保型形式の適切なp進族を構成して、対応する局所積分を計算する必要があります。筆者は有限指標に対してp-depletionを定義して、その性質を研究し、p進体や実数体、分岐素点など様々な状況設定で局所積分を計算しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筆者は今年度に, 以下の研究を行ないました。 (1) U(2,1)xU(1)のジーゲル・ヴェイユ公式 (2) U(2,1)の有限位数の指標に関するp-depletionの構成とその性質 (3) 実ユニタリ群U(2,1)xU(1,1), U(3)xU(2)や分岐ユニタリ群などでの局所積分の計算 (1)のジーゲル・ヴェイユ公式の直接的応用は見つかっていないものの、U(2,1)の保型形式の基本的フーリエ・ヤコビ級数、Weil表現の格子モデルや村瀬-菅野の原始テータ関数の理論などU(2,1)の正則保型形式に関する重要な知見を得ることができました。(2)と(3)はU(n+1)xU(n)のp進L関数の構成を目的とするコロンビア大学のHarris教授と台湾国立大学のMing-Lun Hsieh教授との共同研究です。(2)により研究計画が大幅に進展し、CMテータ級数の幾何的理論やユニタリ群の肥田理論、Coatesの予想などについて筆者は効率的に学ぶことができました。(3)の研究でも、これまで馴染みが薄かったベクトル値保型形式や不変式論に関して相当な知見を得ることができました。 今年度の研究により足場が構築され、新しい知見を得ることができました。これらは次年度以降の研究の土台となるはずであり、本年度の研究はそれなりに順調であったと考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
p進数の新しい側面として複素数で離散的なパラメータが数では連続的となり、Eisenstein級数以外にも肥田族などp進保型形式の連続族が存在し、複素変数に類似した円分変数の他に、反円分変数や連続族のパラメータを加えた多変数p進L関数など様々なタイプのp進L関数を考えられることがあります。今年度にU(2,1)xU(1,1)の市野-池田公式を明示的に計算することでU(2,1)xU(1,1)の肥田族のp進L関数を構成する足掛かりを得ました。この構成を完成するには、概正則保型形式や無限指標のp-depletionも必要になります。このためにU(2,1)の適切な微分作用素を考えて、対応するp進微分作用素も構成してフーリエ・ヤコビ展開への作用を明らかにして、実ユニタリ群の局所積分を概正則データに拡張することを直近の目的とします。 U(2,1)の肥田理論はU(1,1)の場合に比べて格段に難しく実用上の制約も大きくなります。コンパクトなユニタリ群U(3)はU(2,1)より遥かに容易なので、U(3)xU(2)のp進L関数はより完成度の高いものを構成できると考えられます。U(3)xU(2)の実局所積分の明示計算を本年度に行ったので、来年度にこのp進L関数の構成も本格的に進める予定です。 U(2,1)xU(2)にも興味深いp進L関数が存在することが期待され、高次肥田理論など関連する研究の収集も進めつつ、並行して以前に構成した三重積p進L関数や現在構成しているp進L関数の新しい算術的応用を見出す可能性も検討したいと考えています。
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