研究課題/領域番号 |
18K03714
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
山村 一誠 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (40322630)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2020年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2019年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2018年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 質量放出 / ダストエンベロープ / 恒星進化 / 赤外線観測 / 電波観測 |
研究実績の概要 |
本研究は、2012年に我々が発見した、過去30年の間に大規模な質量放出を行い、急激な赤外線光度の変動を見せた天体の素性を明らかにすることを目的としている。本研究では、我々がこれまで取得した赤外線~電波領域の観測データに対して、輻射輸達計算による詳細な解析により、この天体の星周エンベロープの構造を決定し、そこで起きている事象を定量化する。さらにこの天体の進化過程を推定し、その恒星進化・宇宙進化への影響を議論する。これまでの初期的な解析から、この天体の質量放出量、エンベロープの膨張速度などの性質は、これまでに知られているいかなる天体とも異なっていることが示唆され、その進化過程、質量放出メカニズムの解明は極めて重要な課題である。 本天体は、光学的に極めて厚いダストエンベロープを持つと予想されることから、北海道大学小笹教授(現名誉教授)の協力を仰ぎ、モンテカルロ法によるダストエンベロープ輻射輸達計算プログラムを構築して、解析を進めてきた。後述の通り、技術的問題、また研究代表者の想定外の業務量増大により研究に大きな遅延が出ていたが、2021年度より改めて研究体制の立て直しを図り、課題解決に取り組んできた。エンベロープ構造決定を加速するため、内外2層から成る球対称ダストシェルの構造、温度分布等をすべてパラメータで制御するというアプローチを発想して、パラメータ範囲を絞り込んだ。その結果、物理的に薄く光学的に極めて厚い内層と、それよりもやや物理的に厚く、光学的にやや薄い外層の組み合わせが、球対称モデルとしてはユニークな解であることを確認した。この結果を基に、物理的に整合する輻射輸達プログラムにより、最終的なモデルパラメータを求める解析を進めている。一方、ALMAデータの詳細解析から、この天体までの距離と光度を推測した。これらの成果を、日本天文学会2023年春季年会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度にあたる2018年度は、研究協力者である小笹教授の協力を仰ぎ、この天体のように極端に光学的に厚いダストエンベロープに適用可能なモンテカルロ法を用いたダスト輻射輸達モデルの開発、動作確認、改良をおこなった。また、解析環境の整備と、計算の高速化にも取り組んだ。第2,3年度にあたる2019-2020年度は、このプログラムにより、観測スペクトルを再現できるようなエンベロープの構造、ダスト量等を求めようとした。しかし、計算可能な物理的に意味のあるパラメータ範囲内では、改善の方向に進むものの観測データを十分に再現するには至らなかった。また、この間研究代表者の所属機関におけるプロジェクト業務が想定以上に増大したことや、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、研究は当初の計画に対して大きく遅延した。このため、事業期間の延長を決断した。2021年度に、改めてダストエンベロープモデルの見直しを行い、光学的に厚い層と薄い層の2層構造を採用することで、観測されたスペクトルをよく再現できることを、全てをパラメータで記述する簡易的なモデルによって確認し、とり得るパラメータ範囲を定めた。2022年度は、ALMAおよびHerschelの解析を最新のツールにより進め、確定的な測光値を得、モデルパラメータの範囲を更新した(結果に本質的な変化はない)。また、ダストシェル、分子シェルの見かけの大きさを測定し、モデル計算の結果と比べることで、この天体までの距離と光度を推定した。小笹教授と協力して、物理的整合性をもった2層輻射輸達モデルを作成し、簡易モデルの結果を基に最終的なエンベロープモデルを構築する解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、ALMAデータの最新のツールによる再処理を進め、観測所のクオリティチェックでも検出できなかった観測データのキャリブレーションエラーを発見した。不適切なデータを除外することで、これまで頭を悩ましていた観測データの異常な輝度分布成分の問題が消失し、データクオリティ・信頼性が大幅に向上した。また、Herschel測光データについても最新の処理結果を基に慎重に測光を行い、遠赤外線およびサブミリ波領域の測光値の確定データセットを構築することができた。この結果を基に改めて物質・温度分布をパラメータ制御したモデル計算のデータセットから、最適なパラメータ範囲を絞り込んだ。 現在、このパラメータを元に、モンテカルロ法による物理的整合性のある輻射輸達プログラムによる計算を進め、より正確なモデルパラメータの導出を行っている。この手法は計算時間が非常にかかるので、高速のCPUを持つ計算機を追加導入し、これまでの計算機と並列で計算を進めている。上記の通り再解析によって得られたダストおよび一酸化炭素ガスの輝度分布画像から、エンベロープの見かけの構造を求め、モデル計算との比較から、エンベロープの空間スケールを確定し、天体までの距離、エンベロープの実距離、光度を推定した。今後、最終的なモデルパラメータの決定を行い、その情報を元に、この天体の進化を共同研究者とともに議論していく予定である。昨年までは対面でのワークショップ開催を計画していたが、近年の情勢からオンラインでの実施に変更する。
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