研究課題/領域番号 |
18K05383
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡部 昭 東北大学, 農学研究科, 助教 (70302198)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2020年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2018年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | Glycoside hydrolase / ゲノムマイニング / β-グルコシダーゼ / エンドグルカナーゼ / pNP-グルコース / GH3 / GH5 / GH12 / キシラナーゼ / GH1 / サイレント / セルロース結合ドメイン / GH10 / 反応生成物阻害 / バイオマス / 真菌類 / バイオマス分解酵素 / 麹菌 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き麹菌ゲノム上に存在するGlycoside hydrolase family(GH)タンパク質群のうち、これまで未解析であった麹菌β-グルコシダーゼのうち、新たにBglB、E、G、I、L、M、Xの麹菌を宿主とした高発現株を取得した。このうち、β-グルコシダーゼの基質である4ーメチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシドを含んだプレートアッセイで最も大きなクリアゾーンを形成したBgl Iについて、酵素を精製しその諸性質を解析した。本酵素は、硫安塩析、2種類の陰イオン交換クロマトグラフィー(Super Q 650M、DEAE FF)によって精製した。精製酵素を用いた解析から、本Bgl Iは55℃、30分処理で残存活性を100%保持しており、かなり温度に対して安定性の高い酵素であることが判明した。基質特異性については、天然オリゴ糖基質のうちラミナリン、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、マルトース、アルブチン、サリシンといったα、β結合やアリル配糖体について反応させたが、いずれの基質に対しても活性を示さなかった。一方、β-グルコシダーゼの合成基質(pNP(p-ニトロフェニル)基質)に対しては、pNP-グルコース、pNP-フコース、pNP-ラクトース、pNP-ガラクトース、pNP-キシロース、pNP-セロビオシドについて反応させたところ、pNP-グルコースのみに活性を示す極めて基質特異性の高い酵素であることが判明した。 一方、エンドグルカナーゼについては、従来未解析のEglG、N、O、Pの麹菌を宿主とした高発現株を作製し。このうち発現タンパク質量が最も多かったEglNについて、硫安塩析、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、昨年度に引き続き麹菌のサイレントな新奇推定セルラーゼ遺伝子の網羅的探索の結果、存在が明らかとなったGlycoside hydrolase family(GH)タンパク質群の中から、従来未解析であったGH3に属するβ-グルコシダーゼ(BglB、E、G、I、L、M、X)とGH5、12に属するエンドグルカナーゼ(EglG、N、O、P)の、麹菌を宿主とした各高発現株の作製を行った。具体的には、糖質分解酵素データベース(CAZy)、タンパク質局在部位予測(PSORT)、分泌シグナル配列予測(SignalP 4.0)プログラムによるタンパク質局在部位の推定から、菌体外に分泌すると推定された酵素について、麹菌そのものを宿主として高発現系を構築した。このうち、「研究実績の概要」の項で述べたとおり、麹菌ゲノム上の推定β-グルコシダーゼ(Bgl)とエンドグルカナーゼ(Egl)について、昨年度取得したBglU/Bgl5、XynBの各高発現株に続いて、Bglで7株、Eglで4株の酵素について、その高発現株の作製に成功した。 このうちBgl Iは、温度安定性に優れており、反応基質がpNP-グルコースに特化した極めて特異性の高い酵素であると考えられたが、他にも未解析で今後解析すべき特徴的な基質が存在する可能性は十分あり、今後の解析が待たれる。 このように、当該年度は新型コロナウイルス感染防止のため、所属機関のロックダウンの影響や、大学で実施する講義、実習への対応が従来と大きく変更となり、その準備に多大な時間を要したため、本研究課題の遂行に非常に大きく影響した。 このため、ゲノムマイニングの手法によって、昨年度に続き新奇で有用なバイオマス分解酵素が取得できているものの、現段階では本課題は「遅れている。」ものと考えざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、麹菌ゲノムからゲノムマイニングの手法によって新奇で有用なバイオマス分解酵素と考えられる、GH3に属する分泌型β-グルコシダーゼ(BglB、E、G、I、L、M、X)とGH5、12に属するエンドグルカナーゼ(EglG、N、O、P)の高発現株を取得できた。今後は、さらに有望と推定される酵素についてその高発現株の取得を順次実施する。そのため、ゲノムマイニングで対象とする真菌、酵素の種類を増やしさらなる有用酵素の探索を継続していく。 また、令和元年度以降の計画((1)麹菌で高発現させた各新奇推定セルラーゼの精製 (2)各新奇推定セルラーゼの難分解性バイオマス分解能の評価)として、1)取得した各新奇推定セルラーゼ高発現株の大量培養、各種クロマトグラフィーによる精製法の確立、各タンパク質の精製標品の調製、2)本申請課題で取得を目的とする難分解性バイオマスの高分解能を保持した酵素の選別・評価のLangston らの方法(2011)に従った実施を行う。特に2)については、各酵素の存在・非存在下で以下のように解析する。i)適当なバッファーに結晶性セルロース(Avicel)を懸濁し、各新奇推定セルラーゼ及びポジティブコントロールとしてHypocrea jecorina Cel7A、Cel5Aをそれぞれ個々の最適条件で反応、ii)各酵素タンパク質とAvicelの反応後の産物中の単糖類と二糖類の合計量をHPLCによる示差屈折法で測定、iii)H.jecorina Cel7A、Cel5Aでの反応産物から検出される単糖類と二糖類の合計量の高い方を100とし、各新奇推定セルラーゼとAvicelの反応後の単糖類と二糖類の合計量との比較によるセルロース分解能の評価で、その結果、H.jecorina Cel7A、Cel5Aでの反応よりも高い値を示すものを選抜し新奇バイオマス高分解酵素の取得を目指す。
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