研究課題
基盤研究(C)
パルミトレイン酸(POA)は、アトピー性皮膚炎などに関与する黄色ブドウ球菌の生育を抑制し、様々な有用機能が知られている表皮ブドウ球菌の生育を抑制しないという選択的抗菌活性を持つ。本研究では、酵素法でリン脂質をPOA結合リン脂質に変換した。黄色ブドウ球菌だけがリン脂質を加水分解する酵素を持っていることから、黄色ブドウ球菌の存在時のみ、不活性型のリン脂質が活性型のPOAになるはずである。リゾ型リン脂質を原料として、ホスフォリパーゼA2を用いてPOA結合リン脂質に変換後、その活性を測定したところ、当初の期待に反し、有意な選択的抗菌活性が得られなかった。
近年、大腸、皮膚、口腔の常在微生物と健康・疾病の関係の研究が進展し、有用微生物を用いた臨床試験研究も進展し、腸内細菌に関する商品が出始めている。皮膚細菌叢については、アメリカにおいて、黄色ブドウ球菌だけの生育を抑制する微生物を用いたアトピー患者に対する臨床試験研究で効果が得られており、黄色ブドウ球菌の生育を抑制し、表皮ブドウ球菌の生育を抑制しないという選択的抗菌活性は有用であることが分かった。POAが持つ選択的抗菌活性の場合、エステル型ではなく、遊離型にしなければ効果を発揮できない事が本研究で判明し、今後、遊離型のPOAの活用が期待できる。
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