研究課題
基盤研究(C)
クスノキ科の雌雄異株の先駆性落葉樹アオモジは、国内では山口と岡山の一部、九州西岸から奄美諸島に分布するとされたが近年、分布拡大が報告されている。拡大前後の分布域43ヶ所各16個体のDNA解析から、拡大前のアオモジは遺伝的多様性の高い南西諸島とそれより北の2つに分かれた。分布拡大したアオモジはどちらかに属し、一部で混交がみられた。集団の遺伝的多様性は、拡大前の分地域と比べて低いことはなく、比較的多くの個体が移入されたことと雌雄異株の影響が考えられた。皆伐地においてアオモジは、埋土種子集団の形成、実生の発生範囲の広さ、実生と切株萌芽の大きな初期成長によって在来の先駆樹種に対して優位にあった。
分布拡大する前のアオモジが2つの遺伝的に異なる集団からなり、それぞれの集団から移入され、分布拡大している状況、さらに両者の混交も示すことができた。また、アオモジが雌雄異株であることの遺伝構造および個体群動態への影響を考察することができた。アオモジは伐採など攪乱された土地で在来種に置き換わり、下刈りなど植生管理や樹木の多様性に影響すると予想された。皆伐造林において、埋土種子から発生する大量の実生と、切株から発生する萌芽の旺盛な成長に対して、下刈りの追加と除伐の徹底が必要となる。鑑賞、切花、精油抽出などに利用する植栽は、雄株または雌株のみとして、逸出を防ぐ必要がある。
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