研究課題
基盤研究(C)
本研究では始めに、(1)細胞認識分子Dscamによって自己の樹状突起間でのみ反発作用を引き起こす、自己交叉忌避の分子機構の解明に取り組み、Dscamが下流の細胞骨格制御分子を介して、自己交叉忌避シグナル伝達を行うことを明らかにした。(2)次に、Dscamシグナルを解明する過程で同定したリン酸化酵素Wnkの機能解析を行い、Wnkが軸索の伸長と維持を司ることを明らかにした。最後に、(3)樹状突起における活動電位の逆伝搬を抑制する電位依存性カリウムチャネルKv4.2とその制御サブユニットKChIP1、DPP6Sとの複合体構造をクライオ電子顕微鏡によって解明し、ゲート開閉の制御機構を明らかにした。
我々ヒトの脳神経系は、1000億個もの神経細胞がその複雑な分枝パターンをもった樹状突起と軸索を介して精密なネットワークを形成し、情報処理、運動、学習、意思決定などを行う。本研究成果の学術的な意義は、(1)樹状突起や軸索の分枝パターン形成と維持の機構を明らかしたこと、(2)神経細胞が機能的電気信号を生み出すために必須なカリウムチャネルの活性制御機構を明らかにしたことによって、神経細胞の発生と機能の両面のメカニズムに迫ることができた点である。その社会的意義は、損傷を受けた脳の再生や、イオンチャネルの機能不全による精神疾患の治療という医療への応用にも道を切り開いたことである。
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