研究課題
基盤研究(C)
ヒトを含めた哺乳類の心筋細胞は,一般的ドグマと異なり出生時にはまだ最終分化しておらず,胎児期の分裂能を残存したまま,形態学的・生理的・生化学的に未成熟である。マウスでは,心筋細胞は出生後1週間ごろにようやく分裂を停止し,ほぼ離乳期の約1か月齢で成獣レベルまで分化する。本研究では,この時期の左心室筋細胞の制御因子を検索し,意外にもインターロイキン-6/gp130シグナルが初期分裂の重要刺激因子であり,その抑制は20日齢段階の左心室の総心筋細胞数,壁厚,収縮能を有意に低下させることを見出した。したがって本研究により,この信号系が乳幼児期心筋疾患の新たな薬物標的となる可能性が判明した。
本研究の学術的意義は,①哺乳類の出生後早期の一過性心筋細胞分裂が,成長後の心臓の形態・機能形成に重要であること,②それが主としてインターロイキン-6/gp130シグナルにより駆動されることを見出したことである。近年,ヒトの心筋細胞も胎児期・新生児期の後も,わずかながら継続的に分裂していることが知られ,再生療法への応用が期待されている。また近年,小児がん治療を受けた小児が,永年後心機能低下生じることがあることが知られ,Oncocardilogy的課題となっている。本研究は,小児心臓病治療にサイトカイン/gp130系が応用できる可能性をはじめて示した社会的意義がある。
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