研究成果の概要 |
トリプルネガティブ乳がん (TNBC) は異質性の高い疾患で, 早期再発や治療薬への耐性・抵抗性が問題となっている. 本研究では高頻度に不活化 (発現低下・変異) を認めた SALL3の分子機構を解析することで, TNBCの新しい生物学的特性の同定を試みた. その結果, 高頻度に生じたSALL3の発現低下は主にメチル化で制御されており, この相関はTNBCにおいてのみ認められた. また, SALL3は転写複合体を形成することで, その標的遺伝子発現を制御すること, SALL3の発現低下がタキサン系薬剤への抵抗性に寄与していることを示した.
|
研究成果の学術的意義や社会的意義 |
TNBCはERやHER2陽性サブタイプと異なり, 明確な治療標的が存在しないため, 内分泌療法や抗HER2療法の効果が期待できない. さらに, 概して予後が悪く, 早期再発も多いことから, TNBCの予後改善を目的とした治療法の確立, メカニズムの解明は急務であった. 高頻度に不活化 (発現低下・変異) を認めた SALL3の分子機構を解析することで, TNBCの新たな生物学的特徴付けは, 治療法確立に繋がることが期待されるため, 本研究の社会的意義は大きいと考えられる.
|