研究課題
基盤研究(C)
2021年度に続いて2022年度も新型コロナウイルス感染症の拡大により研究実施に支障をきたしたため、「介入研究による候補食因子の有効性の確認」に焦点を当てデータ解析を実施し、興味深い結果を得た。日本人特有の遺伝性血栓性素因である Protein S Tokushima (PS p.Lys196Glu)の変異アレルを有しない女子大学生12名を対象として、早朝空腹時に約700 kcalの高脂肪食(脂肪69.3E%、炭水化物25.6E%)または高炭水化物食(脂肪1.3E%、炭水化物90.6E%)をクロスオーバー法にて摂取させ、摂取前、および摂取2.5、5.5時間後に採血し、血中脂質、血液凝固・凝固制御因子の動態を解析した。高脂肪食摂取後に血中トリグリセリド、small dense LDLコレステロール、第Ⅶ因子活性が著明に上昇したが、高炭水化物食摂取後にはいずれも低下した。高脂肪食、高炭水化物食のいずれの摂取でもLDLコレステロール、HDLコレステロール、アポA-Ⅰ、アポB、アポC-Ⅲ、アポEは軽度に低下したが、アポC-Ⅱは高炭水化物摂取後に軽度に上昇した。一方、総プロテインS抗原量は食事摂取で変動せず、プロテインC抗原量、フィブリノーゲンは高炭水化物食摂取後に軽度に減少した。したがって、プロテインC-プロテインS血液凝固制御系は高脂肪食摂取後の第Ⅶ因子活性上昇に伴う血液凝固能亢進の制御には関与しないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
我々は中年肥満女性および若年非肥満女性を対象とした横断研究で、空腹時の血中総プロテインS抗原量がLDLコレステロール、トリグリセリド、アポB、アポC-Ⅱと強く正に関連することを報告した(Otsuka Y.et al. 2018)。本研究課題では、食事摂取に伴う血中脂質およびプロテインSを含む血液凝固・凝固制御因子の動態を明らかにする目的で、Protein S Tokushima変異アレルを保有しない女子大学生12名を対象として高脂肪食と高炭水化物食摂取による介入研究を実施した。その結果、高脂肪食摂取後にトリグリセリド、small dense LDLコレステロールの上昇とともに第Ⅶ因子活性が著明に上昇することを確認し、その制御にプロテインC-プロテインS血液凝固制御系が関与しないことを示唆する結果を得た。
女子大学生を対象とした高脂肪食と高炭水化物食摂取による介入研究の研究成果を論文にまとめ公表する予定である。
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