研究課題
基盤研究(C)
肺動脈性肺高血圧症は、無治療の場合はその5年生存率が約20%と重篤な難病である。早期診断が難しく、現在までに実用化された疾患特異的バイオマーカーは存在しない。我々はこれまでに、患者由来組織を用いた網羅的解析によって新規病因蛋白セレノプロテインP(SeP)を同定し、SePが疾患発症メカニズムに深く関与していることを示した。本研究において、患者由来血液サンプルを用いたSeP濃度測定の結果、患者群は対照群に比べ血中SeP濃度が有意に高値であり、更に治療経過中のSeP濃度の増減が、その予後と相関することを示した。また、これらの変化は心不全や他の一般的な生活習慣病では認められず、疾患特異性が示唆された。
肺動脈性肺高血圧症は、現時点で根本的な治療法が肺移植のみに限られる重篤な難病である。その非特異的症状のため早期診断が難しく、現在までに実用化された疾患特異的バイオマーカーは存在しない。本研究で明らかになったセレノプロテインPを本疾患のバイオマーカーとして実用化することができれば、これまで入院の上心臓カテーテル検査などの侵襲的検査を行うことでしか診断や治療効果判定が出来なかった本疾患について、より簡便な非侵襲的スクリーニングが可能となり、診断後も定期的に必要であった入院検査を安全に減らすことができれば、患者負担を減らし適切な治療法の選択につながることが期待される。
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