研究課題/領域番号 |
18K12560
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
|
研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
山藤 正敏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (20617469)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2018年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | シルクロード / 天山北路 / セミレチエ / チュー渓谷 / キルギス共和国 / 考古学踏査 / 突厥 / ソグド人 / 中央ユーラシア / シルクロード天山北路 / ソグド / 交易都市 |
研究実績の概要 |
本年度は、キルギス現地にて3年ぶりにフィールド調査を実施した。今回は、2018・2019年度に調査できていなかった南方山麓地帯の西部とその周辺にとりわけ焦点を絞って、考古学踏査を実施した。 考古学踏査の結果、計38遺跡を記録することができた。これらは主に、「居住地」、「生活遺構」、「葬祭遺構」を含んでいる。今回確認した唯一の「居住地」(町)であるタシュ・マザール遺跡(CV22007)は、小河川間の段丘緩斜面上に広がり、約6 ha(東西約150 m、南北約340 m)の規模を有する。現地表面では、家屋の痕跡と思われる小丘が無数に連なっていた。遺跡範囲の北部には47 m四方の建物跡が認められ、公共建造物の存在が推測される。表採した土器片から、8から9世紀頃の所産と考えられる。「生活遺構」として、計20遺跡を記録した。このうち13遺跡(17遺構)は囲い込み遺構であり、溝や堤等で円形あるいは矩形に一定範囲を区画し、内部の閉鎖空間(平坦面)を活用した痕跡と見られる。12基は円形または半円形、4基は矩形、残りの1基(CV22022-1)は不定形であった。残る1基(CV22030)は溝を伴わない珍しい型式であり、長さ50~80 cmの礫による積石列により円形に縁取られていた。これら囲い込み遺構では異物が採集できなかったため年代は不明であるが、紀元前後から18世紀頃まで幅広い年代が推測される。「生活遺構」の残り6遺跡は、18世紀頃の所産と考えられる矩形建物遺構である。また、20件の「葬祭遺構」を記録し、クルガン(円墳、前8世紀から;前3世紀頃)7遺跡、また、小型円墳群(前3世紀から後5世紀頃か)7遺跡を含む。 本年度の調査により、調査対象地域の南北にわたる遺跡分布状況を明らかにすることができた。これにより、チュー渓谷西部における遺跡分布状況の通史的変遷を具体的に描き出すことが可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までは新型コロナウイルス感染症拡大のために現地調査を実施できなかったが、本年度は現地調査を実施し、昨年度・一昨年度に想定していたものと同等以上の調査成果を上げることができた。また、研究期間の延長が認められたことから、2022年度中に全ての計画を完了する必要はなくなった。こうした事情から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究最終年度となる令和5(2023)年度は、これまで蓄積したデータの総括・分析と、学術的に適切なかたちでの公表に注力する予定である。 これまで、調査年度毎に調査データの総括・分析を実施しており、概ねデータの全容は把握している。しかし、調査期間全体を通じた取得データの統合は2022年度までは実施できていない。このため、2023年度にはこうしたデータの統合を行い、不足した情報を補ったうえで各遺跡を再評価し、最終的な分析・評価を実施する予定である。 上記のデータ統合とともに、本研究による新たな調査データを広く中央アジア研究者に開示する目的で、最終報告書の執筆を進める。これにより、本研究の学術的位置づけを明確にするとともに、中央アジア史においてチュー渓谷が果たした歴史的・文化的役割を総合的に示したい。
|