研究成果の概要 |
本研究では, 1,2,3-トリアゾール基を含む直鎖型六座配位子からなる鉄(II)スピンクロスオーバー(SCO)錯体の複数の誘導体を合成し, それらの熱的スピン転移温度(T1/2)と光誘起スピン転移(LIESST)後の熱緩和温度(T(LIESST))を調べ, Letardらの相関式T(LIESST) = T0-0.3T1/2よりT0を求めた。その結果T0 = 189 Kと見積もられ, 四座以下の直鎖型多座配位子SCO錯体のT0に比べ高くなることがわかった。また, 三脚型六座配位子や直鎖型五座配位子を用いた類縁錯体も合成し, それらの磁気的性質を調べ, 直鎖型六座配位子錯体のSCO特性と比較した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
次世代メモリー素子, スイッチング素子の候補物質として, 温度変化や光照射により磁気的スイッチングを示すスピンクロスオーバー(SCO)錯体が挙げられるが, それらのデバイスへの応用には室温付近での光による物性制御が不可欠となる。本研究の成果は, 低温下で光により誘起された準安定HS状態をより高温まで保持するための分子設計指針を提案しており, 今後の物質開発の一助になることが期待される。
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