研究課題/領域番号 |
18K16294
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
市川 伸樹 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (50779890)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2018年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | リンパ球単球比 / 切除不能大腸癌 / 姑息的切除 / 転移性大腸癌 / 大腸癌 / 切除 / 予後 / マクロファージ / リンパ球 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
切除不能転移性大腸癌において、末梢血中リンパ球/単球比(LMR)は生命予後と関連するとされる。また、血中の免疫細胞の組成は、腫瘍局所での免疫状態を反映するとも報告される。今回、遠隔転移を有する切除不能転移性大腸癌における原発巣切除の意義を見いだす事を目的とし、切除により免疫細胞の組成が好転する集団では生命予後改善の意義があるのではないかと考えた。切除不能転移性大腸癌の原発巣切除によりLMRの術後増加する症例は減少する症例よりは生命予後が良い可能性を考え、切除後にLMRが増加する症例と減少する症例を比較し、免疫状態変化と予後与える影響を検討した。結果、切除不能転移性大腸癌において、64例の原発切除症例を59例の非切除症例を比較し、原発切除症例で予後が良い事が示された。また、両群では背景因子に差を認めるものの、Cox回帰による予後因子解析でも原発非切除は独立因子となっていた。さらに、原発切除症例でLMRの変化に注目して評価を追加すると、LMRの術後増加症例は減少症例では背景因子に差を認めず、増加症例は減少症例に比較して有意に予後が良い事が見いだされた(生存期間中央値27.3対20.8ヶ月)。LMR増加例と減少例で、切除検体を比較すると、増加例では有意にCD8+リンパ球/CD163+単球比が低い事が見いだされ、別コホートでの追試でも同様の組織検体での特徴が見られた。この結果をSurgery Today誌へ投稿しpublishとなった。 その後、LMRの術後増加症例と減少症例の臨床病理学的特徴を術前に予見するバイオマーカーを見出すべく、研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は下記の①-③を具体的な研究課題としている。すなわち、①切除不能転移性大腸癌の原発切除後にLMRの術後増加する症例と減少する症例で、摘出検体中の免疫状態の差異を評価し予後との相関を検討する。また、②大腸癌肝転移における原発肝転移同時切除症例の切除検体を用いて、原発巣と転移巣の免疫状態の差異を評価する。更に、③マウスを用いて高転移大腸癌細胞株の盲腸移植により大腸癌肝転移モデルを作成し、盲腸病変摘出有無での生存期間差異と、原発転移巣それぞれの免疫状態を評価する。同モデルでマクロファージをdeletionし、マクロファージが与える影響を検討する。OVAを遺伝子導入した癌細胞株と、OTマウスを用い、同モデルで盲腸病変、肝病変に浸潤するT細胞のプロファイル、増殖能、細胞障害能を比較する。 この中で、最も要となる研究課題①について、成果を論文化出来た。 ②については、原発巣と転移巣の免疫状態で相関を見出すことができず、positiveな結果を得られず検討を終了した。 ③の動物実験についても、モデルの作成に難渋し、成果が出ていない。 更に、コロナ禍による必要物品の供給遅れなどもあり、更に計画より遅れが生じてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いた検討については、物品供給の遅れもさることながら、モデルが十分に確立していない事が律速となってた。研究期間が限られる事から、下記の検討に計画を移行し、研究成果を完結させたいと考える。 前述の通りこれまでに、切除不能転移性大腸癌において原発巣切除により予後が改善する症例群が存在する事を示し、その症例群では原発巣でのCD8リンパ球/CD163陽性単球比が低い可能性が見いだされた。また、同症例群では、術前後でLMR比が増加する事を示した。今後、これに関連する液性因子IL6、アルギナーゼ1の評価を術前採取血清で行い、そのメカニズムを考察にする予定である。
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