研究課題
若手研究
手指屈筋腱損傷は、生産年齢に多く社会的損失が大きいが、現在の治療体系はプラトー相に達し改良が難しい。治療プロトコールのブレークスルーには分子生物学的アプローチと再生医療の融合が必要である。本研究では、マウスアキレス腱縫合モデルに、間葉系幹細胞(MSC)の一種である脂肪由来幹細胞 (ASC) を移植し、組織学的、分子生物学的解析を行い、抗炎症効果の視点からMSC移植効果の解明を目指す。
手指屈筋腱損傷後、機能にしばしば制限が残る。本研究では、過去に我々が開発したマウスアキレス腱縫合モデルに対し、間葉系幹細胞の一種であるヒト脂肪由来幹細胞(hASCs)を移植し、その効果を解析した。hASC移植群では対照群に比し機能的改善が観察された。組織学的には、hASC移植群はコラーゲン線維密度が有意に高く、異所性軟骨形成が有意に少ない結果を得た。遺伝子発現解析では、hASC移植群において、術後7日目に炎症低減を示唆する結果が、また術後6週目にコラーゲン関連遺伝子群の発現が対照群に比し有意に高い結果が得られた。急性期における炎症低減により、質的・機能的に良好な治癒が得られることが示唆された。
これまでに、腱損傷モデルにおいて、脂肪由来幹細胞の持つ抗炎症/免疫調整効果の解析を行った報告はなかった。手指屈筋腱損傷では、上述のように、機能予後が悪い例が少なくない。脂肪由来幹細胞移植によりこれらが改善すれば、これまで機能障害が残存した患者の福音となる可能性がある。
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