研究課題
挑戦的研究(萌芽)
本研究の目的は、外国語学習者のバイリンガル・レキシコンがどのような過程を経て発達するのかを解明することである。特に、母語(L1)によって獲得された概念(L1概念)を通して学習される外国語(FL)の単語が、L1概念にはない、FL単語固有の概念(FL概念)と結びついていくメカニズムについて研究する。また、2言語間の相互作用という観点から、新たなFL概念が既存のL1概念に与える影響についても探求する。本研究の学術的問いは次の3点である。(1) 使用する機会や場面が限定されている外国語学習において、L1概念はFL概念の形成過程にどのような作用を及ぼすのか。(2) 単語の指示対象が持つ外見的特徴と内面的特徴はFL概念の形成において異なる影響を及ぼすのか。(3) 新たなFL概念形成の過程で、既存のL1概念は変容するのか。本年度は、昨年度作成した「単語の指示対象が持つ内面的特徴とFL概念の形成に関する調査のための学習プログラム」を改良し、データ収集を行った。具体的には、学習対象語を40語から56語に増やし、38名の日本人英語学習者(大学生)に対し、調査・実験を実施した。学習プログラムはQualtrics社のonline調査サイトを利用し実装した。プライム効果による学習効果の検証についてはCedrus社のSuperLabを用いて、各被験者ごとに対面で行った。2021年度オンライン学習及び対面によるストループ課題を用いた調査・実験により収集したデータと本年度収集したデータを総合的に分析した結果、新たに学習したFL単語の新規概念はFLにおける既存の心的辞書に影響を与えることが示されたが、その影響はL1の既存の心的辞書に影響を与える程大きくないことが示された。詳細なデータ分析については現在実施中であり、最終的な総合的考察は研究成果報告書で報告する。
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