研究課題
挑戦的研究(萌芽)
脂質をエネルギー基質として利用する能力である脂質代謝能力は生活習慣病のリスクとの関連が示されている。しかし、中高齢者では脂質代謝能力と生活習慣病との関連について検討されていない。そこで、”WASEDA’S Health Study”のベースライン測定データを用いて脂質代謝能力と生活習慣病との関連を検討した。2021年度までの解析の結果、生活習慣病の服薬者では脂質代謝能力が影響されている可能性が示唆されたため、2022年度は服薬者を除外し解析に必要な変数がそろっている男性289、女性180名の469名のデータを用いて解析を行った。脂質代謝能力の指標は運動負荷試験により測定した脂質酸化量の最大値(maximal fat oxidation:MFO)を除脂肪体重あたりに補正して用いた。性別に除脂肪体重当りのMFOを2分位し、BMIにより分類した痩せ・普通体重者、肥満者の2群と組み合わせ4群で解析を実施した。痩せ・普通体重+脂質代謝能力高値群を基準にした場合の他の群の糖尿病、高血圧症、脂質代謝異常症の多変量調整オッズ比および95%信頼区間(CI)を潜在的交絡因子を調整してロジスティック回帰モデルで算出した。糖尿病では有意な差は認められなかったが、脂質代謝異常症では肥満+脂質代謝能力低群(OR:2.42,95%CI:1.16-5.01)、肥満+脂質代謝高群(OR:2.50,95%CI:1.03-6.09)で有意にオッズ比が高かった。一方、高血圧では肥満+脂質代謝能力低群では有意にオッズ比が高かったが(OR:2.54,95%CI:1.15-5.65)、肥満+脂質代謝能力高群では有意な差は認められなかった。よって、脂質代謝能力は生活習慣病と関連し、肥満であっても脂質代謝能力が高い人では高血圧になりにくい可能性が示唆された。
3: やや遅れている
本研究の目的は中高年男女コホートを用いて、横断研究で脂質代謝能力と関連が強い疾患や危険因子を推定し、縦断研究で脂質代謝能力の変化が生活習慣病の有病率および危険因子へ与える影響を明らかにすることである。本研究は40歳以上の早稲田大学の卒業生およびその配偶者を対象としたコホート研究“WASEDA’S Health Study”と連携して実施している。しかし、2022年度も昨年度までと同じくCOVID-19の流行によりWASEDA’S Health Study の測定が中断しており、縦断的な解析を実施できなかった。そのため、本研究課題はやや遅れているといえる。
2023年度も早稲田大学の卒業生を対象としたコホート研究 (WASEDA’s Health Study)と連携してデータの測定および試料の採取を行う。COVID-19の影響により測定は現在中断しているが、2023年2月より測定を再開しており、2023年度は1年目に測定した341名の内200名の追跡測定と新規参加者100名の測定を行う予定である。測定と並行して、これまでに測定したデータを用いて解析を行う。また、5年目までの測定で完成した1379名のコホートデータを用いて、脂質代謝能力の関連要因の解明および生活習慣病の有病率および危険因子との関連を引き続き検討する。この結果は「第42回日本臨床運動療法学会」にて学会発表を行う。その後、学会発表で得られた助言を参考に、脂質代謝能力と生活習慣病の有病率および危険因子との関連を再度検討し、研究成果を論文としてまとめ上げる。
すべて 2022 2021 2020 2019 2018
すべて 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 10件、 査読あり 20件、 オープンアクセス 17件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 8件)
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